今回も「パワーハラスメント(以下、「パワハラ」という。)」について、お話をしたい。
前回のコラムにて、パワハラを受けたと感じた人のその後の行動で、「何もしなかった」と回答した割合が約4割程度であった、というお話をしたが、その理由は何であったのだろうか。
厚生労働省委託事業の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書」によると以下の内容であった。
ここから考えられることは、パワハラについての対策に期待感を持っている人間が少ないという点である。事業者側はこの状況を踏まえた対策を早急に実施する必要がある。
具体的には、相談窓口の設置や担当部署の配置及びそこに配属される職員の教育ではなかろうか。医療機関においては、まだまだ対応が遅れているところが多く、職員に対しての研修会は行われているものの、相談窓口の設置や担当部署の配置(産業医を含む)がされていない施設が数多く存在する。また、中小の医療機関においては、内部での設置が難しい(院内の職員に相談しにくい環境がある)ため、外部の相談機関を利用している病院もある。
パワハラは経営上の課題として、しっかりと認識した上で対策を講じる必要がある問題である。
パワハラが職場や事業者側に与える影響については、主に下記が挙げられている。
では、具体的な対策はどのように行っているのであろうか。最も多いのが、「相談窓口を設置した(82.9%)」であり、それに続くのが、「管理職を対象に、パワハラについての講演や研修会を実施した(63.4%)」であった。また、効果を実感できた取り組みの最上位にも「管理職への講演・研修会」が挙げられており、次点に「一般職員に対しての講演や研修会の実施」であった。これらの結果から言えることは、日頃から常にパワハラについて、意識を持たせることが重要な対策のひとつであるということである。講演や研修会以外にも、就業規則などの社内規定に盛り込んだり、ポスターやリーフレットなどで啓発資料を配布したりとパワハラの予防に向けた取り組みを行っている事業者が増えているようである。
その結果、「パワハラに関連して気を付けていること」から以下のような事例が挙げられている。
このデータの中で研修・講習会を受講した人の割合が、受講したことのない人の割合の2倍となっており、研修・講習会の意義が大きいことがわかる。
今後、更なる事業の効率化と生産性を高めるためには、ハラスメント対策が重要な課題となる。その対策の如何によっては、事業者の体質そのものが問われることとなるであろう。職員が快適かつ能動的に活動することにより、事業の成功が導かれる。このことを肝に銘じて、具体的かつ効果の高い対策と分析並びに職員のメンタルフォローを行ってもらいたいものである。
今回は、パワーハラスメントに関してお話をした。機会があれば、その他のハラスメントについても記述したい。少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。