前回、以下の項目について記述したが、今回は、病院のペーパーレス化について、実際の導入事例を中心に記載する。
下記は、文書管理システムを導入した病院におけるフェーズ毎の主な作業内容である。
1.方針決め
システム更新にあたり、原本を「紙」「電子」「紙と電子の併用」のどの区分とするのか。さらに、電子媒体を原本にする場合、スキャン後の紙の保存方法はどうするか等の方針を定める必要がある。
※ 当該医療機関は、電子カルテの更新に際し、ペーパーレス化したいという方針から、文書管理システム(タイムスタンプ付)の導入を決定。それに伴い、スキャン後の紙の管理方法も患者フォルダでの保管から、スキャン実施日ごとの段ボール保管に変更した。 ※ 方針決めの必要性としては、運用方法に合わせてシステムの導入レベルを検討・決定するためである。 |
2.院内の紙文書の洗い出し
「分類」「文書名」「発生場所」「現行運用」「次期運用(現場での参照方法、スキャン取り込み[取込場所、タイミング、ツール、原紙一定期間の保管等])」を整理した。
※ ここでの洗い出しは「説明同意書」「診断書」のレベルで行い、スキャン運用の整理のために実施。電子化のための細かい文書の洗い出しは別途行った。 ※ 次期運用の整理とは、スキャンを「どこで」「どのシステムに」「どのタイミングで」「どのように取り込み」「最終的にどのように閲覧するか」を決めるものである。 ※ 分類(格納先)の必要性は、担当者によって電子データの格納先(分類場所)がまちまちとならないようにするため、ここで決められた紙の文書分類に従って現場が仕切り紙を出すことで、スキャンした後に統一したデータフォルダへの格納を実現させるものである。 |
3.運用決め
ベンダー決定後、スキャン方法については、文書管理システムを活用した直接スキャンとなったため、それに従って運用方法を整理した(ここでは、外注検査結果など、各部門でシステムに取り込むものは考慮していない)。
(1)仕分け
(2)搬送方法
それぞれの紙文書を1患者1フォルダにまとめ、診療録管理室(スキャンセンター)に送付。
(3)送付時間
午前中の分は午後まで、午後の分は翌日朝までにまとめて送付。
※ 上記手法については、プロジェクト会議で運用を承認後、クラークへの研修を行い、手順の統一化を図ったものである。 ※ ペーパーレス化を推進するために必要な文書管理システムの機能によっては、院内の運用が変わることがあることから、事前に決めた方針に沿った運用決めが重要となる。 |
文書管理システムの導入にあたり、ペーパーレス化推進のメリット・デメリットとしては、以下の事が考えられる。
1.メリット
2.デメリット
今回は、ペーパーレス化対策として、病院でのシステム導入事例を中心に記載したが、病院機能評価においても「文書の一元管理」に関する項目があることから、最後に、その概要を記述したい。
1.評価の視点
2.評価の要素
3.評価のポイント
4.C評価となりうる状況(例)
まとめになるが、ペーパーレス化を推進する上で、文書の一元管理は必須である。その作業を効率的に行うためにも、事前の調査とシステム化は重要であると考える。
次回は、医療セミナー(後記)について記述したい。少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。