今回も、2019年1月に開催された医療セミナー2019のセミナー後記として、お話をしたい。
セミナーは、各会場において、以下の内容にて行われた。
1月23日(水):関西会場及び1月25日(金):東京会場
株式会社Benett One(ベネットワン) 代表取締役 米山 正行 氏
1月24日(木):中部会場
長野県厚生農業協同組合連合会 富士見高原医療福祉センター
富士見高原病院 経営企画課 長坂 卓也 氏
今月から4回にわたり、【入退院支援加算に着目した病院構造改革】の講演について記述したい。
今回は、株式会社ベネットワンの代表取締役 米山 正行 氏より、講演についての資料をご提供いただいたこともあり、その内容に沿って記述させていただいた。
まずは、医療の現状として特に、人口動態に着目して考えてみたい。
医療機関は、地域住民が健康的な生活を実現するためには、非常に大切な存在である。そういった地域医療機関へのニーズは変わらないものの、需要と供給のバランスが今後、つり合わない状況になるといったことから、2018年度診療報酬改定は、新たに機能分化や地域医療構想などの推進が図られたものとなった。
日本の人口は近年横ばいである。2019年には日本の人口はピークを迎え、これからは緩やかに減少をしていくことがわかる。
しかし、高齢者人口や高齢化率に関しては、増加していくのがこちらのグラフで表されている。また、生産年齢人口(15歳~64歳)は減少していき、今後、労働人口の減少が予想されている。
日本の人口構造の変化を見ると、現在は、1人の高齢者を2.6人で支えている社会構造となっているが、20~64歳の生産労働人口の減少が気になる。
現在でも医師不足、看護師不足と言われているが、高齢者が増え、医療需要が変わらない状況であれば、今後、ますます病院にとっては医師を始めとした人材の確保という問題が山積みとなってくる。
今後、少子高齢化がさらに進み、後期高齢者が増加し、高齢化が急速に進むことが見込まれる。1990年では5%だった後期高齢者の割合が、2025年では、団塊の世代が75歳以上を迎え18%となり、2060年まで一貫して高齢化率は上昇していき、27%となる見込みである。2040年には団塊ジュニア世代が後期高齢者となる。国は、2025年問題の次に2040年問題として既に動き出している。
上表の中から、「認知症高齢者の増加」「単独世帯や夫婦世帯の増加」「75歳以上の人口増加率」といったところに着目してみたい。
「認知症高齢者の増加」については、既に、これらのデータに着目して認知症外来などを展開している医療機関も増加している。「単独世帯や夫婦のみ世帯の増加」や「都市部の高齢者人口の急激な増加」といったところから、社会構造に合わせた患者サービスの充実がどれだけ図ることができるか、病院の今後の展開にも注目すべきところであろう。
なお、今後、75歳以上人口が急速に増加する地域は、医療サービスも大きく変化していく必要性が高い地域であると考える。
上図は、高齢化のピークや医療需要総量のピークを示した図である。地域により高齢化や医療需要のピークが異なるといったことを表している。
黒や青の地域は、既にピークを迎えた地域となっている。都市部は赤が多く、ピークは2040年に来ると想定され、今後の医療ニーズの変化が急激に来ると予想される。
このデータからも今後、都市部の医療機関こそ病院構造改革が必要になると考える。
2017年の業種別倒産件数では、最多が「老人福祉・介護事業」の111件(前年比2.7%増、前年108件)、次いで、マッサージ業、整体院、整骨院、鍼灸院などを含む「療術業」が68件(同17.2%増、同58件)、「病院・医院」が27件(同12.9%減、同31件)となっている。
倒産理由としては「経営不振」や「人材不足」が多く、今後の労働生産人口減少を考慮した人材不足は、医療分野でも大変心配される要素である。
「地域と患者ニーズを考慮した医療提供施設への転換」
今後は、病院機能として以下のいずれかの選択になると言われている。
(1)基幹型の病院として広域で高度医療を提供する病院
(2)地域医療サービスに密着した地域密着型の病院
(3)疾患特異的ないわゆる専門病院
その中でも、(2)の需要は今後ますます高まっていくと予測されており、在宅医療など地域のニーズに合わせた病院運営が重要になってくる。
第一章のまとめとして、今後の医療の現状を踏まえた医療経営のポイントとして、下記の4点を挙げてみた。
(1)超高齢化対策
地域ニーズを確認しながらの病院サービスの提供。
(2)人的資源の有効活用
少ない人員で効率よい医療サービスの提供。
(3)業務の効率化・標準化
質の高い医療提供には効率化・標準化が不可欠。
(4)院内・地域での情報共有
地域医療構想が推進される中、病院内での情報共有は電子カルテ等で進んでいる。
しかしながら、地域内医療機関の情報共有化に目を向けると、完成度の高いネットワーク化が進んでいる地域は、まだまだ少なく感じられる。今後は、上記項目に着目しながらシステムを構築していくことが、大きなアドバンテージを生むものと考える。
これらをカバーする病院改革として有効なのが、入退院支援システムの構築である。
~次回に続く~