前回までは、株式会社ベネットワンの代表取締役 米山 正行 氏による【入退院支援加算に着目した病院構造改革】の講演の前半部分「医療の現状」「入退院支援概要」「PFM理論の活用」についてお話をしてきたが、今回からは後半部分「入退院支援システム構築に向けた目的(効果)設定」について記述したい。
入院前から予定される入院期間の説明や、退院後の生活に対する見込みとサポート状況の説明を行う。治療過程の明確な説明をすることで「追い出される!」といった患者の訴えは減ったという声がある。また、患者が積極的に治療に参加するようになったという声も聴き届く。
高齢化が進むのと同時に、今後の高齢者の生活スタイルで出ていた独居や夫婦のみでの高齢者世帯が増える。これは、入院に際して患者家族の付添を考えた場合に、付添家族が平日に来られるなら良いが、そうではなく、土日を望む患者家族にとっては土日入院というのはサービスに当たると考える。
入院した際に今後のことをゆっくり話ができるチャンスにもなる。今後は、これらのことを検討することも必要ではないか。
治療が標準化されることによって、入院前に的確な説明ができる。また、治療の標準化は、医療の質向上にも繋がる作用もある。それは、患者満足度にも繋がるということなる。
「厚生労働省は中核病院に対して、医師の業務移管(タスクシフティング)を義務付ける検討に入った」との情報が2019年1月9日の日本経済新聞に掲載されていた。
厚労省が今回検討に入った移管内容は、下記に記している内容である。検討は地域中核病院に対してではあるが、今後は、こういった取り組みは各医療機関で医師確保といった観点でも必要になるであろう。
【医師の業務移管(タスクシフティング)】
下記は、入退院支援で考えられる医師の業務負担軽減の一例である。
軽減業務 | 効果 |
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これだけ業務負担軽減へ繋げることが可能と言われているが、各施設の状況で内容は変わると考えられる。
このように、「入退院支援をすることによって医師にもメリットがある」と思わせることが医師の積極的参加へ繋がると言われている。
医師確保も大事だが、今後の労働者不足を考えた場合、看護師確保も大切である。
それぞれ業務分担をすることで、看護師の業務軽減へ繋げる効果も入退院支援でできる。
軽減業務 | 効果 |
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経営効果としては次の事が考えられる。と同時に、以下の項目についても念頭において入退院支援システムを構築すると効果的ではないかと考える。
入退院支援の目的・効果としては、その他加算への窓口であると考える。
入院時支援加算の評価は200点である(退院時1回)。これだけでは、人員配置をして体制を整えても病院的には赤字になると思われる。
入院前に支援を行うに当たっては、次の1)~8)の情報把握が必要となる。
1)~8)を確実に実施できるとすれば、3)の褥瘡(じょくそう)に関する危険因子の評価は「褥瘡ハイリスク患者ケア加算」につなげることができる。
また、4)栄養状態の評価であれば、栄養管理実施加算に繋がる。
入退院支援を確実におこなうことは、様々なスクリーニング(拾い上げ)の窓口としての効果もある。
区分 | 科目 | 点数 |
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手術症例 |
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がん症例 |
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260点 |
既往歴 |
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ADL |
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CGA (総合機能評価) |
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ケアプラン |
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情報共有 |
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効果・加算に繋げることで確実に加算取得する。これらのシステムが構築できるのであれば、入退院支援部門の設置は絶対に無駄にはならない。
~次回に続く~