今回は、株式会社ベネットワンの代表取締役 米山 正行 氏による【入退院支援加算に着目した病院構造改革】の講演後期の最終回として、院内体制構築とこれまでのまとめについて記述したい。
基準人数は以下のようになっているが、実際に動かすとなるとその他に医師事務作業補助者(クラーク)などの確保が必要になる。
また、人員数に関しては、どの程度から始めるかで決まる。どのような形でスタートするか、どのような計画をもって体制構築するかが重要である。
(1)入退院支援加算1.2又は3の施設基準で求める人員に加え、十分な経験を有する以下の人材が配置されていること
≪許可病床数200床以上≫
≪許可病床数200床未満≫
(2)地域連携を行うにつき十分な体制が整備されていること。
体制構築に向けた考え方、人的問題の次に確認することについてはこの二つだと思われる。
PFMの最小単位は、前々回のコラムにて紹介したが「入院から退院までの治療とケアを計画した「クリティカルパス(以下、パスとする)」である。
病院で稼働しているパス数とパスの稼働率を確認することも必要である。入退院支援システム構築に際しては、パスを使って入退院支援構築することが一番の早道だと言われている。
前項(5-2)でも記述したが、小体制で言えば、パスの利用率が高い診療科からスタートするといったことも検討の範囲に入れても良い。
パスの使用率が低く、今後、パスを活用していきたいと考えている施設であれば、入退院支援システムを契機に、パス構築をすることも有効ではないだろうか。
パスは、医療の質向上やコスト削減といったところにも寄与すると思われる。是非、現状の確認と今後のパスの使い方をご検討いただきたい。
また、文書・情報システムの構築状況については、スクリーニングした情報を確実に共有できる状況を作る。例えば共通のフォーマットを作成するなどのことを確認していただきたい。
入退院支援構築のキーワードとしては、PFMの理解であると考える。
ただ入院から退院、その先の生活を考えるだけではなく、「ヒト・モノ・カネ」といったマネージメントも一緒に考えることによって、もっと多くの患者サービスや医療経営といったところにも寄与する。
情報共有の部分では病院内情報共有、地域介護施設との情報共有が重要になる。
これはまさに、地域包括ケアシステム構築にも繋がり、病院にとっては患者サービスや経営的なメリットにも繋がると考える。
入退院支援システム構築による効果としては、以下が考えられ、これらを総合的に捉えて構築することが、ひとつの部門として作る目的やメリットとなる。
2025年問題や、その先の2040年問題など、日本は急速に超高齢化社会に突入していく。
医療の必要性は変わらない状況ではあるが、医療経営といったところでは地域ニーズに注目し、その地域に合った医療提供を行うことが重要となる。
また、労働人口も減少する中で、職員の確保も益々難しい状況となるであろう。
今後の医療状況を考えて入退院支援システムを構築することは、それらの問題解決・対策として有効である。
入退院支援システムの構築は大きな病院構造改革に繋がり、その先には患者サービスや医療の標準化、人的リソースの有効活用、業務改善、病院経営の健全化など、多くの効果へ繋がると考える。
入退院支援システムの構築は、入院から早期退院への流れを構築することだけではなく、病院構造改革、地域医療構想、病院経営といった大きなことを作り出す可能性のあるツールである。
地域医療構想、PFMの活用、業務改善、病院経営といった病院全体で意識を合わせ、協力をして入退院支援システムの構築をすることが重要だと考える。
~了~
少しでも皆様のお役にたてれば幸いである。