医療機関における医学管理料算定の改善事例
病院経営に影響を与える医学管理料とその課題(第2回)
2020年8月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

今回は、前回紹介した病院経営に影響を与える医学管理料における算定フォローシステムの概要と、システム導入前に実施したシミュレーション結果に引き続き、実際に算定フォローシステムを導入した医療機関の事例について記述したい。

医学管理料算定支援機能:算定フォローシステムについて

算定フォローシステムは、算定可能な医学管理料の課題や問題点を精査し改善することで、患者QOLの向上、医療の質の向上、医療収益の改善に寄与することを目的としており、以下のことがシステム的に可能となる。

  • 事前シミュレーションや適切なカルテ記載の支援
  • 医学管理料算定要件のチェック
  • 病名と医薬品の適応症チェック など

(1)算定候補のチェック

(i)初回診療

電子カルテの画面を閉じる際に、算定可能な医学管理料があれば、算定候補の入力画面【図1-(i)】が自動的に起動。

(ii)次回以降

電子カルテの画面を閉じた際に、算定可能な医学管理料があれば、アイコン【図1-(ii)】で知らせてくれる。

【図1:算定候補のチェック画面】

【図1:算定候補のチェック画面】

(2)病名登録・診療録の記載

算定条件に沿った病名や指導内容の入力が容易に行える。

(3)算定情報の医事システムへの送信

入力画面に沿って入力を行い、登録が完了すると医事課へ算定情報が送信されるため、算定漏れが低減される。

※同意書や文書の提供が必要な管理料については、別途、文書を発行する必要がある。

導入効果としては、

  • 算定候補となる医学管理料の算定漏れが低減
  • 管理用算定の条件に合ったテンプレートから入力するため、必要事項の記載漏れを低減
  • 病名候補の病名登録画面も起動するため、適応病名の登録漏れも低減

などを図ることができる。

医療機関における事例紹介

実際に、算定フォローシステムを導入した医療機関における効果を検証した。

(1)導入スケジュール

(1)導入スケジュール

(2)医学管理算定実績件数推移

医学管理算定件数(実績)について、導入前2カ月と導入後2カ月の推移を調査した結果は以下の通りである。

(2)医学管理算定実績件数推移

導入月の算定実績件数が落ちてしまった原因としては、従来のやり方からの変更に対する戸惑いや、新しいシステムの操作に対する不慣れなどが影響したものと考えられる。その後、システム操作にも慣れ、さらに、算定ボタンの位置変更など操作しやすさを求めた工夫を行った結果、算定実績が上がってきている。

ここで言えることは、医師に対する事前操作説明の重要性が挙げられる。せっかくシステムを導入しても、それをうまく活用できなければシステムの導入効果を生み出すことにならない。システムの特性を知ることと操作の熟知が重要なポイントとなるのである。

(3)算定フォローシステム導入の効果

算定フォローシステム導入の効果として、適応症チェックを上げておきたい。

今回検証した医療機関においては、病名入力が平準化されておらず医師任せになっていたことから、適正な病名の入力ができず、医学管理料の算定に苦慮していた経緯があったが、算定フォローシステムの機能活用により、適応症チェックについて効果を上げることができたのである。これについても、導入前後4カ月間のデータ推移を検証した。

厚生労働省の適応症データベースと突合し、病名の査定対象として減額される金額を試算した結果、導入前2カ月の平均値が▲3,000万円であったのが、導入後2カ月の平均値は▲2,500万円と月額500万円の改善可能性を示すことができた。

これは、処方薬に紐づけられた病名候補を挙げて選択させることで、より正確な病名の入力が可能となり、査定対象を低減させることができたと言えよう。

また、医学管理料の算定改善可能性の最大値についても調査を行ったところ、医科レセプトの外来件数に大きな変動はなかったにもかかわらず、改善可能件数が増えていたことがわかった。

これは、システムを活用してもさらに改善可能の余地を残しているという結果であるが、原因として考えられることは、導入して間がないため、システムを使いこなせていないことなどが挙げられる。更なるシステムの有効活用を図るためには、正しい操作と運用への慣れが重要であるという課題の残る結果となった。

まとめ

医学管理料の算定は、多くの医療機関において大きな課題の一つであり、精度の高い算定を行うための仕組づくりは、とても重要な位置づけとなる。

その中で、システムの活用は、有効な手段の一つといえる。

繰り返しになるが、システム化による主な改善点としては、以下の通りである。

  • 医事課や委託会社の判断で行っていた算定を、システム化により医師が確認・判断(可視化)できること
  • 算定要件となる指導内容や記載項目の不備をシステムが明示することにより、記載漏れを防止できること
  • 医師や診療科の解釈によらず、算定に対する認識や理解度を平準化させることにより、算定根拠の統一性を持たせること

また、システムの導入に際して、着実な効果を得るためには、動機付けから効果測定までの以下のようなライフサイクル【図2】が重要であることを改めて申し上げたい。

【図2:システム導入のライフサイクル】

医学管理料の算定にあたっては、いかに算定(請求)漏れをなくし、記載項目の不備等による返還対象をなくすことが重要なのである。

今回は、算定フォローシステムを導入した医療機関の事例について記述した。

少しでもお役にたてれば幸いである。

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