今回は、前回紹介した病院経営に影響を与える医学管理料における算定フォローシステムの概要と、システム導入前に実施したシミュレーション結果に引き続き、実際に算定フォローシステムを導入した医療機関の事例について記述したい。
算定フォローシステムは、算定可能な医学管理料の課題や問題点を精査し改善することで、患者QOLの向上、医療の質の向上、医療収益の改善に寄与することを目的としており、以下のことがシステム的に可能となる。
(i)初回診療
電子カルテの画面を閉じる際に、算定可能な医学管理料があれば、算定候補の入力画面【図1-(i)】が自動的に起動。
(ii)次回以降
電子カルテの画面を閉じた際に、算定可能な医学管理料があれば、アイコン【図1-(ii)】で知らせてくれる。
【図1:算定候補のチェック画面】
算定条件に沿った病名や指導内容の入力が容易に行える。
入力画面に沿って入力を行い、登録が完了すると医事課へ算定情報が送信されるため、算定漏れが低減される。
※同意書や文書の提供が必要な管理料については、別途、文書を発行する必要がある。
導入効果としては、
などを図ることができる。
実際に、算定フォローシステムを導入した医療機関における効果を検証した。
医学管理算定件数(実績)について、導入前2カ月と導入後2カ月の推移を調査した結果は以下の通りである。
導入月の算定実績件数が落ちてしまった原因としては、従来のやり方からの変更に対する戸惑いや、新しいシステムの操作に対する不慣れなどが影響したものと考えられる。その後、システム操作にも慣れ、さらに、算定ボタンの位置変更など操作しやすさを求めた工夫を行った結果、算定実績が上がってきている。
ここで言えることは、医師に対する事前操作説明の重要性が挙げられる。せっかくシステムを導入しても、それをうまく活用できなければシステムの導入効果を生み出すことにならない。システムの特性を知ることと操作の熟知が重要なポイントとなるのである。
算定フォローシステム導入の効果として、適応症チェックを上げておきたい。
今回検証した医療機関においては、病名入力が平準化されておらず医師任せになっていたことから、適正な病名の入力ができず、医学管理料の算定に苦慮していた経緯があったが、算定フォローシステムの機能活用により、適応症チェックについて効果を上げることができたのである。これについても、導入前後4カ月間のデータ推移を検証した。
厚生労働省の適応症データベースと突合し、病名の査定対象として減額される金額を試算した結果、導入前2カ月の平均値が▲3,000万円であったのが、導入後2カ月の平均値は▲2,500万円と月額500万円の改善可能性を示すことができた。
これは、処方薬に紐づけられた病名候補を挙げて選択させることで、より正確な病名の入力が可能となり、査定対象を低減させることができたと言えよう。
また、医学管理料の算定改善可能性の最大値についても調査を行ったところ、医科レセプトの外来件数に大きな変動はなかったにもかかわらず、改善可能件数が増えていたことがわかった。
これは、システムを活用してもさらに改善可能の余地を残しているという結果であるが、原因として考えられることは、導入して間がないため、システムを使いこなせていないことなどが挙げられる。更なるシステムの有効活用を図るためには、正しい操作と運用への慣れが重要であるという課題の残る結果となった。
医学管理料の算定は、多くの医療機関において大きな課題の一つであり、精度の高い算定を行うための仕組づくりは、とても重要な位置づけとなる。
その中で、システムの活用は、有効な手段の一つといえる。
繰り返しになるが、システム化による主な改善点としては、以下の通りである。
また、システムの導入に際して、着実な効果を得るためには、動機付けから効果測定までの以下のようなライフサイクル【図2】が重要であることを改めて申し上げたい。
医学管理料の算定にあたっては、いかに算定(請求)漏れをなくし、記載項目の不備等による返還対象をなくすことが重要なのである。
今回は、算定フォローシステムを導入した医療機関の事例について記述した。
少しでもお役にたてれば幸いである。