近年、医療機関におけるICT化は目覚ましいものがあり、電子カルテの普及をはじめ、部門システムの充実といったところに注目が集まっている。
このような中、今回からは院内ICTを活用したツールの事例について記述したい。
DPCは、入院患者の病名や診療内容に応じて定められた1日当たりの定額の点数で入院診療費が計算され、入院期間によって点数が定められる。このことから、病院経営上、患者ごとの入院期間の把握は、特に注意を払う必要がある。
そこで、主治医や病棟看護師並びに関係者が入院患者の状況を把握し、DPCの早期決定及び円滑な退院促進による効率的病棟管理を行うことが、とても重要なのである。
これは、導入されているDPC管理システムの情報を参照し、入院患者のDPC決定状況や、現在、どのDPC入院期間にあるかなどを一目で把握できる一覧画面である。
独自開発したMSW(Medical Social Worker:医療ソーシャルワーカー)支援システムと連携させることにより、現在のMSW介入状況や退院調整状況を表示することもできる。
入院患者の区分(60日超、30日超、DPCIII超、DPCII超)ごとに帳票が一覧として出力されるので、患者の入院状況が容易に把握できる。
さらに、医師別や病棟別などで出力することにより、各セクション(担当)等における、より細やかな現状把握につながるとともに、退院の促進につなげていくことができる。
下図のEXCELデータは、毎週、診療部長から主治医全員に対してメール配信し、退院促進を行っているものである。さらに、必要度を満たしていない患者については、診療部長から主治医に対して、改めて注意がなされる。
主治医がDPC病名をつけないまま診療情報管理士がコード決定した時には、既にDPCII超えしているケースもあり、先ずはDPC病名の早期の入力が重要となる。
これらを抑制するためにも、DPC病名を4日以上登録していない主治医に対して、電子カルテ上のメールを一括送信し、DPC病名の早期入力を促している。
ツール導入前の運用と、導入後の運用は次の通りである。
DPC状況の照会ツールを作成・活用したことにより、ツール導入前に全体の約37%あった「DPCII超」が、導入後の割合は約32%と5%ほど改善できている。
これは、多少なりとも病院経営に寄与する結果となっており、今後、この運用が定着すれば、さらなる効果が期待できると考える。
今回は、DPCの状況照会ツールについて記述した。
次回は、「手術器械準備支援システム」と「病床状況ボード」について記述したい。
少しでもお役にたてれば幸いである。