閣議決定された「未来投資戦略2017」から4年、2021年3月末から、オンライン資格確認が始まる。
今回からは、オンライン資格確認の意義について記述したい。
“技術革新を活用し、健康管理と病気・介護予防、自立支援に軸足を置いた、新しい健康・医療・介護システムの構築”を目指し、(1)データ利活用基盤として、『個人・患者本位で、最適な健康管理・診療・ケアを提供するための基盤として、「全国保健医療情報ネットワーク」を整備する。同ネットワークは、患者基本情報や健診情報等を医療機関の初診時等に本人の同意の下で共有できる「保健医療記録共有サービス」と、更に基礎的な患者情報を救急時に活用できる「救急時医療情報共有サービス」等で構成し、これら自らの生涯にわたる医療等の情報を、本人が経年的に把握できる仕組みであるPHR(Personal Health Record)として自身の端末で閲覧できるようにすることを目指す。』とある。
いわば、国民全員に対して、個人単位での最適な健康管理を促すとともに、日本全体で健康情報を利活用するための基盤を構築していきたいという戦略の表れである。
また、(2)保険者や経営者によるデータを活用した個人の予防・健康づくりの強化として、『予防・健康づくり等に向けた加入者の行動変容を促す保険者の取組を推進するため、保険者に対するインセンティブを強化する。~中略~。各制度共通の評価指標は、特定健診・特定保健指導の実施率に加え、がん検診、歯科健診の実施状況やICT等を活用して本人に分かりやすく健診結果の情報提供を行うこと等を追加することで、予防・健康づくりなど医療費適正化に資する多様な取組をバランス良く評価するものとする。』とも書かれている。
すなわち、これからの少子高齢化を見据え、全体的な医療費の削減と健康寿命の延伸を図ることで、健康日本を構築していく戦略であると考えられる。
医療保険制度では、各保険者や制度全体の運用コストの低減の観点から、マイナンバー制度の施行に際しては社会保険診療報酬支払基金と国民健康保険中央会が保険者等からの委託を受け、情報提供ネットワークシステムに一元的に接続する仕組みとしており、国保法等の改正により保険者等から支払基金・国保連への業務委託の規定が整備された。
厚生労働省・支払基金・国保中央会では、2015年にソフトウエア、2016年にハードウエアを整備したが、現在の被保険者番号は世帯単位であり、個人単位で計測して資格管理することが難しいことから、マイナンバーを個人単位での被保険者番号として活用することになったのである。
なお、個人単位の被保険者番号は、加入者の資格履歴を継続して管理する資格確認インフラを整備すれば、医療等分野の情報連携に用いるIDとして導入が可能であると考えられているが、まだマイナンバーカードの取得率は低く、この個人単位の被保険者番号の導入が取得率向上の起爆剤になると期待されている。
出典:平成29年11月8日「第108回社会保障審議会医療保険部会」(厚生労働省)より
出典:平成29年11月8日「第108回社会保障審議会医療保険部会」(厚生労働省)より
保険者のメリットとしては、
などとなっているが、詳細は次回以降に記述させていただきたい。
現在、医療保険制度の資格管理は、保険者ごとに世帯単位で被保険者番号の発行・管理を行っているため、保険者を移動すると保険者間を跨いだデータの連携が難しい。そのため、個人単位でのデータ管理ができておらず、重複投薬や診療の質の向上が図れていない現状がある。
そこで、新被保険者番号は、保険者を異動すると変更される16桁程度の番号を新たに附番することになりそうである。原則として、保険者番号を組み合わせて用いることとした上で、番号の履歴を継続して一元的に管理する仕組みとなる。
出典:平成29年11月8日「第108回社会保障審議会医療保険部会」(厚生労働省)より
今回は、オンライン資格確認に関する未来投資戦略と被保険者番号について記述した。
次回は、オンライン資格確認について、記述したい。
少しでもお役にたてれば幸いである。