前回は、オンライン資格確認に関する未来投資戦略と被保険者番号の導入について記述した。
今回は、オンライン資格確認とそれに付随する事項について記述したい。
現状の健康保険証による資格確認の課題として、資格喪失後の未回収保険証による受診結果に伴う過誤請求が診療報酬請求時に判明することがあり、保険者・医療機関等双方への負担発生があげられている。
令和3年3月より、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等の活用によるオンライン資格確認の運用が開始される予定であり、受診時ごとの資格確認が可能となることから、これらの課題解決策として期待されている。
出典:平成29年11月8日「第108回社会保障審議会医療保険部会」資料(厚生労働省)より
オンライン資格確認等システム導入により可能となることとしては、次のようなことが考えられている。
なお、オンライン資格確認の実施並びにマイナンバーカードの健康保険証利用にあたっては、以下の事前準備が必要となる。
社会保険診療報酬支払基金は令和2年7月6日に医療機関等向けポータルサイトを開設し、同年8月7日からは顔認証付きカードリーダーの申し込み受付を開始するなど、オンライン資格確認実施の準備を着々と進めている。
また、厚生労働省も医療機関や薬局に対して、オンライン資格確認導入を積極的に促している。下図は、厚生労働省が公表している保険医療機関等向けのオンライン資格確認導入に関する準備作業のステップである。
出典:厚生労働省ホームページ(令和2年12月2日掲載資料)より
ステップ1マイナンバーカード活用(保険証利用)のための顔認証付きカードリーダーの申し込み ステップ2オンライン資格確認に必要となる機器の導入やシステム改修のためのシステムベンダーへの相談・発注 ステップ3ポータルサイトからのオンライン資格確認申請や機器等の設定、受付業務等の変更点確認などの導入・運用準備 ~運用開始~ ステップ4補助金申請 |
となっており、特例として、令和3年3月末までに顔認証付きカードリーダーの申し込みを行った保険医療機関等には、補助上限額の範囲内であれば申請に基づき実費補助がなされる(4月1日以降は補助上限額の1/2を補助)とされている。
出典:厚生労働省ホームページ(令和2年12月4日掲載資料)より
マイナンバーカードによるオンライン資格確認の作業手順は、以下の通りとなる。
医療機関等が薬剤情報や特定健診情報等を閲覧する際は、患者本人の同意取得が必要であることから、「3.同意取得」操作により同意維持の明示的確認をシステム上で担保することとなる。
出典:厚生労働省ホームページ(令和2年12月4日掲載資料)より
出典:令和2年9月16日「第130回社会保障審議会医療保険部会」資料(厚生労働省)より
マイナンバーカードを健康保険証として利用するには、被保険者による健康保険証利用の申し込みが必要となる。この作業が少々面倒な印象を持たせるため、事前の紐づけが進まない可能性を感じている。
マイナポータルを使った利用申し込みについては、暗証番号の設定やスマートフォンアプリのインストールが必要となるため、各市町村において設置されるマイナポータル用端末等からマイナポータルにアクセスして、マイナンバーカードの健康保険証利用申し込みを行うことも有効手段の一つである。
また、令和3年3月以降に薬局や医療機関での窓口に設置される顔認証付きカードリーダーでの手続きが容易であると考える(そのために、手続きをサポートする人員を配置しなければいけない問題等が発生する可能性はあるが…)。
既にマイナポータルからの健康保険証としての申し込み受付が開始(令和2年8月7日~)されているが、申し込み者数が公表されていないため、どのくらいの人々が活用されているかは不明である。
オンライン資格確認等システムを基盤として、患者本人や医療機関等において、薬剤情報や特定健診情報等の経年データの閲覧が可能となるが、社会保険診療報酬支払基金(支払基金)と国民健康保険中央会(国保中央会)が持つ情報のうち、閲覧可能となるものは以下の通りである。
閲覧に同意することで、かかりつけ医療機関以外でも患者の情報を確認することができ、より適切で迅速な検査、診断、治療等の実施が可能になる。
また、患者が医療従事者からの問診等に対応する負担の軽減につながることが期待でき、先々は、自分自身の生涯カルテへとつながっていくことになるであろう。
まずは、マイナポータルへの個人の登録が一つのカギとなる。
今回は、オンライン資格確認とそれに付随する事項について記述した。
次回は、オンライン資格確認のメリットや課題について、記述したい。
少しでもお役にたてれば幸いである。