オンライン資格確認の導入メリットと課題、今後について
オンライン資格確認の意義について ~導入のメリットと課題~(第3回)
2021年3月

執筆者:株式会社アイ・ピー・エム
    代表取締役 田中 幸三(たなか こうぞう)氏

前々回からオンライン資格確認について記述してきたが、最終回の今回は、そのメリットと課題そして今後について記述する。

1.オンライン資格確認の導入メリット

オンライン資格確認の導入メリットとしては、主に以下が挙げられている。

  • (1) オンライン資格確認の導入、保険者・保険医療機関等の資格確認事務の効率化
  • (2) 保健医療データの個人向け提供サービスの推進
  • (3) 医療機関・薬局等の情報連携の推進、緊急時の患者情報の共有、多剤・重複投薬等の適正化等
  • (4) 生涯を通じたデータ分析による保健医療の質の向上

さらに具体的なメリットとしては、以下のことが考えられる。

  • マイナンバーカードを使用し、顔認証付きカードリーダーで患者自身が資格確認をすることで、窓口における保険証確認業務が削減される
  • マイナンバーカードの利用により、最新の保険資格情報を自動的に取得できるため、入力作業が軽減される
  • オンライン資格確認の導入により、資格過誤によるレセプト返戻作業の減少が期待できる
  • 一括照会により、来院する患者の保険資格が有効か否か等の確認を事前に行うことができ、当日の確認作業が軽減される
  • 患者同意の下、薬剤情報や特定健診情報を閲覧することができるため、患者の現状にあった投薬や診療を効率的に行うことができる
  • 災害等の緊急時においても、過去の薬剤情報等が確認でき、迅速かつ適切な対応が可能となる
  • 患者本人から情報閲覧の同意を得た場合は、限度額適用認定証等の情報を取得できるため、患者は、保険者から発行される証類等を持参せずに済むことから、窓口での確認作業が軽減される

現時点では、マイナンバーカードの普及がまだ進んでいないこともあり、上記のメリットを最大限に有効活用できるとは言えない状況ではあるが、今後、確実にオンライン資格確認が進んでいくことで、業務の効率化と薬剤情報や健康情報などの共有によるデータの有効活用を図ることが可能となる。

2.オンライン資格確認の課題

オンライン資格確認の課題として、まずはマイナンバーカード普及率の向上であろう。

カード取得に向けた手続きが面倒であり、利用者へのメリットも限られていることから、交付枚数の伸び率も政府の思惑とは遠いものとなっている。交付割合は令和2年12月時点で全人口の2割程度となっている。

今後、マイナンバーカードの取得手続きの更なる簡素化やスマートフォンでの保険証利用システムの開発、健康保険証利用申し込みのためのアクセスポイントを増やす等、様々な手段を講じて普及率の向上が図られることに期待したい。

また、オンライン資格確認の対象外保険の存在やシステム連携における導入時の費用負担についても課題となっている。

以下、システム連携についての注意点を記述する。

システム連携についての注意点

オンライン連携においては、ネットワークの改修も必要であるため、各対象システムベンダーとの詳細な打ち合わせが必要となる。

その際に、資格確認のためのインターネット回線が常時外部とつながることになり、ウイルス侵入等セキュリティ上の問題も解決しなければいけない。

課題という点においては、マイナンバーカードの普及率の向上及び保険証としての役割の定着が一番の課題であり、個人情報の保護の問題やセキュリティ対策などの問題もある。また、国からの補助があるとはいえ、システム導入に伴う医療機関の費用負担が発生する点にも注意が必要である。

3.オンライン資格確認の今後

厚生労働省としては、令和3年3月末に医療機関・薬局の6割程度でオンライン資格確認等システムの実施に必要な顔認証付きカードリーダー導入を目指しており、早急に追加財政補助等の検討を行うなどの「マイナンバーカードの保険証利用の普及に向けた加速化プラン」を実行している。

加速化プランの概要は以下の通りである。

(1) 医療機関等への更なる導入支援

  • 公立・公的医療機関等における顔認証付きカードリーダー申し込み率の公表(毎週)による導入状況の「見える化」
  • 医療機関等の導入を支援するためのシステムベンダーへの見積もり適正化依頼並びに追加的な財政補助の検討

(2) マイナンバーカードの保険証利用申し込みの更なる促進

  • 健康保険証利用申し込みのアクセスポイント増加
  • 保険薬局をマイナンバーカードで様々な手続きができる拠点とする

(3) 訪問看護等におけるオンライン資格確認のあり方に関する検討

  • 訪問看護や柔道整復・あんま・はり・灸におけるオンライン資格確認のあり方について検討

また、厚生労働省においては、オンライン資格確認の今後について、データヘルスの基盤とするため機能を拡大していくと述べており、これらの対応を含めたマイナポータルの利用拡大など、一人ひとりの健康データを取得・開示することで、医療費の抑制と診療効率の向上を目指していくことになる。

【オンライン資格確認の今後】

【オンライン資格確認の今後】

出典:厚生労働省ホームページ(令和2年12月4日掲載資料)より

マイナンバーカードというツールを使い、顔認証システムによる個人の特定と確認を行うことで、様々なPHR(Personal Health Record)の取得がなされ健康な国づくりに生かされていくことを期待したい。

今回は、オンライン資格確認のメリットや課題そして今後について記述した。

少しでもお役にたてれば幸いである。

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