今回は、部門サポートシステムとWebシステムの特徴とその効果について記述したい。
術前では電子カルテから手術オーダーを受信し、受信した手術オーダーを割り付けている。術後ではバイタルサインデータを自動的にプロットし、各種ME機器のデータも取り込むことが可能である。術前から術後まであらゆるデータを集約し業務の効率化を図ることを可能とする。
手術に関する様々な情報やバイタルサインデータを正確に記録・一括管理することが可能である。また、手術オーダー受診やスケジュールの作成といった術前作業から、術中の麻酔記録・看護記録、術後の退室時状態や術後回診に至るまで、手術の進行に生じる煩雑な作業から業務の効率化を推進することができるシステムである。
レジメンオーダーサポートシステムを導入することで注射薬、内服薬のコンビネーションオーダーが可能となり、オーダーの効率化に期待がもてるシステムである。オーダー時に各種チェック(投与量、検査値、インターバル等)がかかるため、より安全かつ効率的なオーダーを出せる効果が期待できる。
1患者1画面での投与履歴や投与予定なども確認することができる。これらの情報を院内スタッフで共有可能なため、化学療法の一元管理にも効果をもたらすことが可能となる。
報告書雛形の自動作成機能やカルテ情報の自動取込、定型語句の貼付けが可能になることにより、返書・報告書作成等の業務効率化を図ることができる。また、作成状況を一元管理することで報告書の作成漏れや遅れを防止し、連携施設へのサービス向上へ繋がることが期待できる。患者情報の地域での連携といった分野が今後益々重要視される。
放射線治療システムは、放射線治療の関係者が治療業務の状況を把握・共有するための画面や有害事象・画像を含む記録を登録し、参照できる画像を有している。
放射線科医や放射線技師、医学物理士、看護師、受付/クラーク間の情報伝達を円滑化し、チーム医療を強力に支援することが可能となる。
周産期管理に特化したシステムであり、周産期に関わる職員の業務の効率化/省力化を図ることが可能となる。
主な特徴として、
などが挙げられる。
集中治療室は専門性が高い部門で、スタッフの業務も煩雑である。経過表や指示機能(指示簿・指示ビューアー)、スコアリング機能など、充実した機能を有するシステムを導入することで、部門の専門性を高めることができる。
既存の手術管理システムと輸血連携が可能となるため、クリック操作で輸液情報を経過表に反映することができる。オペ室からICUに運ばれてくる際でも患者の容態変化を素早く把握し、ICUにおける医療効率を上げることが可能となる。
バイタルサインデータや各種医療機器の設定値、薬剤指示、経過表、in-outバランスなど、患者の入室から退室までに必要な情報の入力、参照ができる。
また、情報を一元的に管理できるだけでなく、各機器からの情報を自動で受け取ることで正確なデータを記録することができ、スタッフの業務効率化を図ることが可能となる。
これまで述べてきたシステム以外にも「診療支援システム」や「病理検査業務支援システム」「細菌検査システム/感染制御システム」「輸血検査システム」「リハビリ管理システム」「栄養管理システム」「物品管理システム」「眼科ファイリングシステム」「ME管理システム」等、数多くの部門サポートシステムがある。
医療情報システムの新規導入や更新の際には、医療機関ごとの今後の姿にあったシステムを事前に検討していくことが、業務の効率化の推進や働き方改革への取り組みの一つとしてとても重要なのである。
Webを使ったシステムは、医療現場においてまだ導入事例が少ないのが現状である。ここでは、既存システムのWeb化によるメリットを中心に記述したい。
Web系システムのメリットとしては、「導入が容易であること」「費用が比較的安価であること」「利便性が高いこと」「ペーパーレスの推進に寄与できること」などが挙げられる。
Webシステムの概要や特徴を以下に列挙する。
映像や音声、画面の共有などができるビジュアルコミュニケーションシステムである。
会議室への入室人数を抑えるために各所からカンファレンスに参加したり、患者への接触人数を抑えるために診察室以外の場所から診察に参加したりと、感染症対策として有効なツールである。また、感染症対策以外にもネットワーク内に専用サーバを設置することで、セキュアな環境で場所を問わず会議に参加することもでき、迅速な情報連携ができるなどのメリットがある。
インターネット端末でなくても院内でTV会議が可能となるなど、集合会議が難しい場合も有効的に活用できるとともに、大人数の会議等、3密を避けた会議が可能となる。
問診をデータ化し、効率的に電子カルテに取り込むシステムである。
病院の内外から情報提供を受けることが可能であり、感染症対策としても有効である。何より転記の必要がなく、事前に患者の情報を確認することができるメリットは大きい。
紙による記入をなくし、集計・分析がシステムで行えることは、大きなメリットの一つである。ペーパーレスにも繋がり、また、集計・分析にかかる時間の短縮と精度の向上が図れる。
入外患者満足度調査や健診機関における顧客満足度調査など、利用方法は様々である。
アンケートシステムと同様、紙による記入をなくすことで集計時間の短縮が図れる。また、判定機能がシステム化されることでリアルタイムでの結果表示が可能となる。
これにより、自身の状態の把握が迅速に行える。同時に、大量のデータ分析もスムーズに行える。
評価結果の集計や個人別経年変化などのデータ分析が迅速に行え、評価にかかる手間や時間を短縮することができる。
いつでもどこでも入力・閲覧が可能であり、ペーパーレスの推進にも寄与できる。保管についても場所を取らず、スペースの有効活用が可能となる。
ホームページの有効活用事例の一つであるが、院内セミナーを発信することで、地域住民及び地域の連携医療機関に対する広告の場として、院内の体制や取り組みをわかりやすくアピールすることができる。撮影等の手間はかかるが、有効な宣伝方法の一つである。
上記に記載したシステムは、部門部署サポートやインターネットを活用したシステムの例であるが、患者へのサービス提供をはじめ、業務時間の短縮やデータの効率的な分析等、様々なシチュエーションで利用可能なシステムである。
導入における注意点としては、しっかりとした導入設計書を作成することから始めるべきである。導入部署任せにせず、きちんとした部門で検証をしたうえで導入医療機関全体として導入前準備、導入時注意点、導入後の活用方法など詳細を検討してもらいたい。
一般的には、システム耐久年数は5年から7年といわれている。確かに、その年数がたつと業務内容やシステムそのものが新しく変わっていくため、逆に手間が増えることにもなりかねない。
現状と将来構想にあった医療情報システムを導入することで、業務の効率化や患者サービスの向上、情報発信(広告)の優位性などにいち早く取り組むことが、今後の病院運営の最善策の一つであると考える。
今回は、医療情報システムがもたらす情報連携の重要性と業務の効率化について、【サブシステム&サポートシステム編】として記述した。
少しでもお役にたてれば幸いである。