「2022年度診療報酬改定」から1カ月たった2022年5月、事前準備や対応方法等について、いくつかの医療機関にヒアリングを行った結果、医療機関としての立ち位置や在り方等を真剣に考え、速やかな対応と将来設計に取り組んでいかなければ、今後ますます厳しい状況に立たされることが見えてきた。
今回と次回にわたり、200床以上400床未満の医療機関の取り組み事例(3例)を紹介するとともに、各医療機関の対応内容から今後の医療機関の在り方を考えていきたい。
1.総括
今回の診療報酬改定は、以下の3点において影響が大きかった。
- 重症度、医療・看護必要度の変更
- さらに求められる地域連携(感染対策・大腿骨近位部骨折など)
- 高度急性期を担うべき病院と、それ以外をふるい分ける改定内容
2.具体的内容
具体的な内容として、以下のことがあげられている。
- 1)前回の改定との比較:重症度、医療・看護必要度の変更が影響
- 一般病棟用(許可病床200床以上の病院)→ 必要度(Ⅱ)義務化
- 特定集中治療室管理料 → 必要度(Ⅱ)の導入
状況としては、一般病棟用はともかく、特定集中治療室管理料用に関しては、必要度Ⅰのシミュレーションを行っただけで、必要度Ⅱの導入に向けて舵取りを行ったため失敗してしまった。また、医事課による重症度、医療・看護必要度への関与が少なかったことも影響したとのことであった。
- 2)感染対策向上加算1の変更による影響
- ア)専従の兼務
疑義解釈により感染制御チームと抗菌薬適正使用チームの専従を兼務できないと読める文面による混乱を強いられたことにより、他の病院でも加算1を諦めるとの声が多数上がっていた。
しかし、最終的には、専従の兼務を認める疑義解釈が追加発表される異例の事態となり、これに伴い、看護部長、薬剤科部長、検査技師長、その他現場の感染担当チームとの協議を医事課主導にて複数回行うこととなった。
- イ)指導強化加算の新設
指導強化加算の新設により、地域の医療機関への感染対策の指導を行うことになるが、これから手探りで医師会と連携の下、連携強化を図っていく必要が生じている。
- ウ)二次性骨折予防継続管理料の新設
二次性骨折予防継続管理料の新設はプラス改定となった。大腿骨近位部骨折患者の骨粗鬆症の評価など他職種との連携においては、先行して取り組んでいたことが功を奏している。しかしながら、他の回復期リハ病院から届出確認が来ているため、さらなる病院間での地域連携が求められている。
- エ)緊急挿入加算、緊急整復固定加算
緊急挿入加算、緊急整復固定加算については、症例レジストリ登録など施設基準上の要件を満たすべく、次月に倫理委員会を通し、早ければ6月届出の運びとなる予定である。
- 3)高度急性期病院として取得すべき新規項目が目白押し
【高度急性期病院として取得すべき新規項目】
「急性期充実体制加算」「重症患者対応体制強化加算」「重症患者初期支援充実加算」
「周術期薬剤管理加算」「周術期栄養管理実施加算」
高度急性期医療として、ICUやHCUにおける栄養や薬剤管理など早期介入が必要である。特に急性期充実体制加算は、今後取得していかなければ急性期としては生き残りが難しくなるのではないか。全身麻酔症例を増やし、精神科医療を充実させる必要があるとのことである。
3.その他
2020年の改定スケジュールを参考に取り組んだが、それだけでは不十分だった点が多かった。
- 1)改定説明会
2020年の改定時と同じ時期に開催したが、今回に関しては実施が遅かった。
理想としては、点数付の短冊が出される3月上旬には、医事課で内容を理解した上で、速報という形で説明会を行った方がよいと思われた。その上で、関係部署が届出を検討する流れがよい。
- 2)新規項目の取得
新規項目に対して、どこで取得に向けて検討するのか、その場所作りが難しいと感じた。
既存の項目、例えば「感染対策向上加算1」などは、既存のメンバー+管理者と召集し易い。そのため、新規項目については、施設基準監査委員会を活用し、委員長への根回しをあらかじめ行うとともに、検討する場を決め、それを手掛かりにキーマンへ相談に行ける大義名分を用意して話を進めることができた。
例えば、「術後疼痛管理チーム加算」を取得するために、関係者との個別のやりとりを進めた上で、近く関係者が一同に介する場を設定する予定としている。
- 3)医事スタッフの作業
コメントコードが増えることで医事スタッフの作業も増える見込みであるが、個人的には未だ理解できていないため、早急に対応を行いたいとのことであった。
今回紹介した1例目は、実際の現場からヒアリングを行ったものであるが、現場ならではの苦労が見えてくる。
2022年3月にオンライン開催したセミナーでもお話ししたが、具体的な取り組み時期については、短冊が出た後、早急に行うべきである。ただその前に、現体制や今後の方向性を示す上でも、院長を筆頭に事務部長、看護部長を柱とした幹部の連携と協調が不可欠である。
個人的には、改定前年の2022年12月頃に厚生労働省から出される指針を参考に、事務方がサポートしながら、次年度の改定に向けたプロジェクトを発足すべきと考える。まずは、今後の方向性(方針)を決め、その方針を受けて、具体的なチーム体制を構築し検討を推進する体制づくりを推奨したい。
今回、国は、医療の機能分化と質の向上を目指す一方で、意図としない施設に対しては淘汰していく方針を打ち出したと考えている。
キーワードは、「確固たる医療機関の将来像の構築と事前の準備」そして「経営チームの強化」にあると考える。
今回は、体制と取り組みについて記述した。
次回も医療機関の取り組み事例を紹介しながら、2022年度診療報酬改定についての考察を記述していきたい。少しでもお役にたてれば幸いである。
追記
今回の診療報酬改定を皆さんはどう感じたろうか。当初の予想では、大きな改定とはならず、小規模でいつもの改定通りに粛々と作業を進めていけばよいと思っていた方も多くいたのではないだろうか。しかしながら、今回の改定は、国の思惑を継続的に明確にしていこうとしている内容が各所にちりばめられているものであると筆者は感じている。
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