前回は、改定の概要、評価の視点及び要素(第1領域、第2領域)について、変更点を中心に記述した。今回は、評価の視点、要素(第3領域、第4領域)及び訪問審査当時の進行表から見える強化項目と準備について記述したい。
特に、進行表の事務分野においては、概要でも触れたが、「組織ブロック」「経営ブロック」「人材ブロック」に分かれて審査が行われる。これらの審査概要についても併せて記述する。
〔要素の変更点〕
※ 薬剤部については、項目の大きな変更はないが、評価順位が変更となり、薬剤師のかかわりの幅を広げる内容が上位にきている。視点として「薬剤師が病院全体の薬剤の使用や管理に関与していること」が求められており、薬剤師の役割の重要性が増している。業務の効率化を目指しタスクシフト・シェアを検討する必要がある。
〔要素の変更点〕
※ 臨床検査においては、委託業者を含めて、業務プロセスを病院側が全て把握しておく必要がある。任せっきりは不可となる。
〔要素の変更点〕
※ 医療機器の安全管理についても評価が厳しく行われることになる。病院全体の医療機器について安全性を含め、医療安全部門との定期的な打ち合わせや整備状況の報告及び適切な使用に関しての指導等が必要となる。
〔要素の変更点〕
※ 確実に情報を伝達する仕組みを確認させる。また、そのプロセスについても明確にし、職員への情報提供体制の構築が必要となる。
〔要素の変更点〕
※ 病院全体の運営においては、より一層実態の評価が行われる。形だけの開催が不可になっていることは言うまでもなく、その会議の意義や病院運営への影響等を評価されることになる。
〔要素の変更点〕
※ 病院機能をいかに有効に活かすという観点から必要な人材の確保が重要である。そのための計画がきちんと立てられ、実施されているかがポイントとなる。
〔要素の変更点〕
※ 財務についてもプロセスが重要視されている。また、医事業務においても言えることであるが、データの有効活用に対しての内容も確認されることになる。担当者任せではなく、病院全体としての取り組みと確立が重要である。
ここまで、評価の視点及び要素(第3領域、第4領域)について記述してきたが、全体的に言えることは、今回のバージョンは、全ての領域においてプロセス評価がポイントになっているという点である。前回も記述したが、書面等の形式についてはほとんどの医療機関で整備が進んできた状況であり、次のステップとして本来あるべき医療機関の機能(プロセス)についての評価になっている。この点を肝に銘じていてもらいたい。
続いて、訪問審査当時の進行表から見える強化項目について記述したい。最初に別表1を参照していただきたい。
病棟ラウンドでは、機構が選択した2つの病棟の医療安全・感染対策が追加されている。今までのバージョンでも、安全・感染については強化項目であったが、病棟での状況を評価することで、さらなる重点項目になっていることがわかる。院内における医療安全・感染対策に関係する職員は、各病棟における対策状況にも目を配る必要がある。特に、病棟文化なるものが存在する医療機関においては注意が必要である。
次に、事務分野においてであるが、前記したように「組織ブロック」「経営ブロック」「人材ブロック」に分かれて審査が行われる。ブロック別に主な確認内容を示したい。
上記のことからわかる通り、これまで事務領域でまとめられていた部分について、ブロックごとに詳細の確認が行われることになる。従って、第4領域についてもしっかりとした担当者を決めて、医事課、会計課、用度課、総務課、人事課が連携して同じ方向を向いた回答をきちんと行うことが必要となる。筆者からは、各ブロックにワーキンググループを持たせて各項目に対する準備をしていくことを推奨したい。
ここまで、2023年4月「病院機能評価 機能種別版評価項目〈3rdG:Ver3.0〉」について、新バージョンの導入から見える医療の質の改善について記述してきたが、率直な感想としては、今まで以上にしっかりとしたワーキンググループの実施が必要であるということである。その際に注意しておきたいのはワーキンググループメンバーの人選である。病院幹部はもとより、管理職、主任、係員等、幅広い職域の人材を選出されたい。横のつながりも大事である。そのためには、ワーキンググループ全体で統一した見解を持ったアンサーシートの作成を推奨する。
病院機能評価については、意見が分かれることもあるが、少なくとも病院全体を見直すためには良い機会であり、良いツールになっていると思っている。是非ともこの機会を有効活用し、医療の質の向上とともに、自施設の機能向上に役立ててもらいたい。
今回記述した内容が、各医療機関の安定と発展に少しでもお役にたてれば幸いである。