医療ITコンサルタント・コーディネーターの米山正行です。
シリーズ「病院IT化 成功のカギ」今回は第3回「電子カルテ導入プロジェクトマネジメントをしっかり考える(1)」としてプロジェクトチーム設立からシステム決定に関する考え方について書かせていただきます。
一般的にプロジェクトチームとは、企業にとっての目的を実現させるために臨時で組織される集団であると定義されています。電子カルテ導入プロジェクトチームは、これまでに病院で決まった「目的・目標・方針」と導入予算を念頭におき、さらに現場運用を考慮して病院にとって最適なシステムと運用を決定しシステム稼動に向けて中心となる重要な組織であります。
この組織作りはとても大切で「プロジェクトチーム管理・運営」を誤ると、病院IT化による目的達成に多大な時間を費やすことにつながります。
電子カルテ稼動という目標達成がプロジェクトチームの大きな役割となります。目標達成に向けてプロジェクトチームは中心となって病院全体を牽引していく役割を担います。
プロジェクトでの主な任務としては以下のことが考えられます。
プロジェクトチームは下書きされた絵に色を付けて完成させる!それがプロジェクトの仕事となりますので責任は重大となります。
プロジェクトの成功は人選で8割は決まる!と考えます。優秀な責任者、現場を取りまとめるリーダーが重要なのは当然のこと、プロジェクトチーム参加メンバーも重要となりますので、しっかりとした人選をおこなって下さい。
またプロジェクトチーム参加メンバー数はできるだけ少ない人数で構成することが重要です。
人選に関するキーワードとしては「少数精鋭」です!
プロジェクトの最高責任者で最終的な決定・判断を求められる重要なポジションとなります。
適切な判断能力と現場状況の把握が重要です。また、現場意見と病院方針の整合性を保つ役割も担いますので一般的には病院長や副院長などが適任ではないかと言われています。
最高責任者のサポート役、ベンダーとの調整窓口、プロジェクトの進行・調整役など、電子カルテ導入に関して実働のトップとなります。プロジェクトリーダーには病院全体の業務をある程度理解していることに加えて協調性があり、他部門との面識もあり周囲からも信頼されている人材が適していると思います。
一般的には事務職員もしくはシステム担当者がおこなっていることが多いと思いますが、筆者は職員全体を見て条件に合う人材がいる場合にはその限りではないと考えます。
各部署より1名ないし2名程度の任命もしくは選出が適当と考えます。
またプロジェクト人材に関しては部門長であることはあまり重要ではありません、それよりも現場運用を良く理解していて周りとの協調性がある人材が適任です。
1・2・3を踏まえ、プロジェクトでは自分の所属部署のことばかりを主張してしまう人材は向いていません。広く物事を考えられる人材が適任です。
最高責任者・リーダーにはある程度のPCスキルがあれば十分だと思います。
ベンダー側の導入担当SEは知識を豊富に持っていますので、最高責任者・リーダーは病院側の考えをしっかりと導入担当SEに伝えることができる、といった要素が重要です。
プロジェクトチームがスタートする前に「組織図の作成」「役割・担当の明確化」「意思決定機関の設置」などを実施し、プロジェクトの運営方針を明確にしましょう。
プロジェクトチーム組織図を作成して下さい。
プロジェクト参加者、全職員に対して組織内の役割・責任・担当者を明確化してプロジェクトチームの透明性を図りましょう。
意思決定機関を明確にすることも重要な要素です。
プロジェクトチームで何かを決定する際に参加者全員の多数決で意思決定をするという話をよく聞きます。
プロジェクトの最終的な目標や方向性が決まっている場合、参加者全員の多数決による意思決定では、最初に決めた方向性がぶれてしまう恐れがありますので、最高責任者やリーダーは注意をする必要があります。
そういった観点から最終的な意思決定に際しては、プロジェクトの方向性や現状での問題点を把握し多角的な視点から意思決定がおこなわれる意思決定機関を作ることが重要です。
プロジェクトは必ず定期開催にしましょう。
プロジェクトがスタートして暫くは全員が集まることが必要となるイベントはあまりありません。しかし、定期開催し現状報告をすることはプロジェクトのオープン化や透明性をアピールすることにつながりますし、プロジェクトに対する信頼や病院IT化が始まるという全職員に向けての意識付けにもなります。
以上1・2・3のようなプロジェクト運営方針をしっかり全職員に明示して、病院IT化へのプロセスをオープンにすることが重要です。
仕様書とは、病院がベンダーに提出する病院の要望を書面にしたものと考えてください。
仕様書を提出することによって、ベンダー側は病院のしたいことを判断する材料になり、病院側は各ベンダーのシステムがどんなことができるのかを判断する材料となります。
またシステムのデモンストレーション(以下“デモ”とする)をする際に仕様書の共有により、ベンダー側と共通認識を持って話ができること、それによって病院側が欲しい情報を確実に得ることができるというメリットもあります。
そのようなことから、仕様書作成は必須であると考えます。
しかし、仕様書作成には各部署との十分なヒヤリングや打ち合わせが必要となり、かなりの時間と労力が必要となります。
仕様書作成はシステム選定において重要な作業でありますが、作成作業は担当職員に相当な負担を掛けることになりますので、仕様書作成代行・支援などのサービスを利用することなどが負担軽減になります。
とりあえず知っているベンダーに声を掛けてデモを受ける施設が多いと感じますが、皆様はいかがでしょうか。
事前に判断指標の検討をせず、デモをおこなうことは「電子カルテって便利だなぁ」といった漠然とした感想だけに終わりがちです。その結果、決定までに再三再四デモをすることになり、それによってシステム決定までに多くの時間が費やされるということに繋がります。
システム選定に関わる方々は「病院にとって有益となるシステムか、病院運用に合致しているか」などから判断しますが、その他の判断指標としては以下に記すものがあります。
システム選定に関わる方々は事前にこれらの判断指標などを院内で情報共有をして、デモに参加することがスムーズなベンダー選定には重要です。
このような過程を踏まえて最終的なシステム決定となります。
プロジェクト運用に関するキーワードは「スマートな運用・決定で時間を節約!」
今回は「電子カルテ導入プロジェクトマネジメントをしっかり考える(1)」という内容でプロジェクトチーム設立からベンダー決定に至るところまでを簡単に考えを述べさせていただきました。
実際のプロジェクトチームの任務としては、もっと多くのイベント等がありますが、今回は「代表的な運営と考え方」で書かせていただきました。コラムの内容を参考にプロジェクトマネジメントをしていただければスムーズな運営ができるかと思います。
次回は「電子カルテ導入プロジェクトマネジメントをしっかり考える(2)」としてキックオフからシステム稼動後までのプロジェクトマネジメントの話をさせていただく予定としています。
プロジェクトマネジメントに関して、筆者の経験と考えが少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いです。ありがとうございました。