高額医療機器選定・更新を効果的に行うための院内データ分析
医療機関データの有効活用と取り扱い(第1回)
2017年5月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

医療機関には様々なデータが存在し、それらを2次利用することにより、病院の状況等を把握し、病院の経営に役立てていることと思います。
今回はそのようなデータの中から「検査件数・患者数」のデータを使用した「放射線検査の診療科別シェア率(必要度)」といったところに着目して高額医療機器の機種選定を中心に考察します。

なお今回の高額医療機器とは100万円以上で購入される機器でなおかつ検査などで保険点数の付く機器を示します。また、モダリティとはその詳細「例として一般撮影機器、CT、MRI」のことを示します。

1. 診療科別高額医療機器シェア率

病院内の各診療科が高額医療機器を使用するシェア率。

この指標が高い診療科は、病院内で高額医療機器を使用した検査をする率が高い診療科と判断され、機種選定時において優先順位の高い診療科になります。そして、優先度の高い診療科が必要とする機能を有する装置が優先的に選定されることになります。

  • 診療科別検査数÷放射線科検査総数×100%=診療科別高額医療機器シェア率

なお、診療科の患者数が多いことによってこの値が高くなることもあります。

より高額医療機器使用に関する正確な内容判断をする目的で「診療科別モダリティシェア率、診療科別患者検査必要度」と過去5年程度の患者数推移を合わせて検討することが重要となります。

2. 診療科別モダリティシェア率

各診療科がどのモダリティを使った検査をしているのかを判断する指標となります。この値が高いモダリティはその診療科での必要性が高い機器と判断します。

1で挙げた診療科別高額医療機器シェア率の値が高い診療科に合わせて機器を選定する際、どの診療科においてどのモダリティの使用頻度が高いのかを判断する指標となります。更に診療科検査オーダーの分析をおこなうことで更に必要な機能や機種の絞込みも可能となります。

  • 診療科モダリティ別検査数÷診療科別放射線検査総数×100=診療科別モダリティシェア率

3. 診療科別患者検査必要度

各診療科の外来・入院診療において高額医療機器がどのくらい使用されているのかを表す指標。
放射線検査全体とモダリティ別で表す。外来、入院、入外患者数それぞれから判断することも可能となります。

割合が100%では受診患者が1回は何らかの放射線検査を受けていることになり、200%では2回といった指標となります。患者数が少なくても、この数値が高い場合には診療科別高額医療機器シェア率も高くなることもあります。各診療科で1人当たりの検査数の把握に使用します。

  • 診療科別全検査数÷診療科別外来・入院患者数×100=外来・入院患者検査必要度
  • 診療科医療機器別検査数÷診療科別外来・入院患者数×100=モダリティ別外来・入院患者検査必要度

高額医療機器の機種選定ポイント

診療科別高額医療機器シェア率からは各診療科からの検査状況を分析します。どの診療科がどれくらいの割合で検査をしているかがポイントとなります。この指標からはどの診療科の患者が高額医療機器のシェア率が高いかという確認ができます。

また、診療科別モダリティシェア率では診療科がどんな機器に検査依頼を出しているか、また、それは診療科の中でどれくらいの割合を占めているかを確認します。これにより診療科別高額医療機器シェア率より更に詳細な各モダリティにおける診療科のシェア率の確認をすることができます。

そして、診療科別患者検査必要度で患者1人当たり何回くらい高額医療機器を使用した検査をしているかを確認することができます。
これは診療の際にフォローアップ等で機器の使用がある、もしくは機器を2つ使用して診断をしているなどの判断に繋がると考えます。

例えば診療科別患者検査必要度が高い値となりモダリティシェア率のCT、MRIなどの数値も均等に上がっている場合には2つ以上の機器での検査をしていることになります。またモダリティシェア率が1つの機器のみ高値になっている場合はフォローアップでの検査が多いのではないかと判断ができると思われます。

これらの指標と検査オーダーを分析することにより、各高額医療機器の更新時に最適な機器スペックを決定する指標として利用することができます。

筆者は以前おこなった高額医療機器選定コンサルティングの際にもこの指標を使用してCT、MRIの今後の機能選定についてご報告させていただきました。現場で働く技師の方々は「なんとなくこういった検査が多いとは感じていたがデータで出されると改めて実感すると共に今後多くなる(強みになる)検査の精度向上にも役立てたい」とおっしゃっていました。

高額医療機器の選定を適正な判断でおこなうことは病院の機能、診療科の機能に合った無駄のない効率的な医療機器の導入となり、安定した診療や検査を提供することが可能となります。

また、これらの指標と一緒に機器の「損益分岐・回転率・収益率」などのデータを組み合わせて高額医療機器の更新を検討することで、今後の高額医療機器における更新スケジュール等も併せて考えることが可能となります。

モダリティには医療の進歩と同じように日進月歩で進歩する機器もあれば、技術的な進歩がゆるやかな機器もあることから、更新スケジュール作成には医療状況や医療機器動向といったところも加味する必要性があるということを付け加えさせていただきます。

分析を行うことで病院にとって必要な機器を知り、また更新タイミングを事前に知ることで適正な医療機器の更新も可能になります。その結果として病院の診療機能や質の向上、病院の安定経営といった効果に繋がると考えます。

まとめ

今回は病院内の簡単なデータを使って高額医療機器の選定について様々な視点からデータを分析することで更新タイミングや機種選定などの適正な判断が可能となることをお話させていただきました。

医療ICT化にともないデジタル化されたデータを活用することは医療機関にとって多くの情報をもたらし、無駄のない機器選定が可能となると考えます。

今回は高額医療機器の機器選定や更新タイミングについて一例として取り上げました。医療機関にあるデータ活用といったところで筆者の考えが少しでもお役に立つことができれば光栄です。

また、弊社では高額医療機器のデータ分析ソフトを利用した医療機器コンサルティングも行っていますので是非ご活用願いたいと思います。

上へ戻る