遠隔利用による在宅診療での活用法について
医療機関での無駄のないシステム導入
2018年2月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

1. 医療情報連携

厚生省からは次期診療報酬改定の方針として、更なる地域包括ケアシステム構築強化が推進される状況です。各医療機関ではその方針を考慮して在宅診療の強化等を検討する施設も多くなっていると思われます。

また地域医療情報ネットワークの構築を検討している自治体も活動を活発化し、今後ますます医療情報連携といった分野での動きが活発になると思われます。

しかし地域医療情報連携に関しては、自治体や各医師会が主導を取って構築されるケースが多いため、各医療機関は今後のそういった動向に対して受け身となっており地域医療情報ネットワークを見据えたシステム導入を検討している施設は少ないと思われます。

そこで今回は地域の医療情報連携ではなく、各医療機関での医療情報連携として、訪問診療での遠隔利用、すなわちリモートデスクトップを活用した情報連携と縦方向の資源(法人系列診療所、クリニック)有する医療機関での活用法についてお話しをしたいと思います。

2. リモートデスクトップとは

リモートデスクトップとは、病院内にあるPC(端末)を外部から違うPCで操作するシステムです。

訪問診療の際には患者様のお宅を訪問しているので病院で使用している電子カルテの使用はできません、しかしリモートデスクトップシステムを活用することで外部から病院の電子カルテシステムを使って診療記録の記載、検査結果を参照、運用によっては検査予約などもできるようになります。

まさに通常病院で使っている電子カルテをそのまま使用できるイメージとなります。

[図] リモートデスクトップ

3. その効果は

リモートデスクトップを使うことのメリットとしては、診察室で行っている記録等が訪問先でも同じように使うことが可能になり、訪問先で書いた記録を戻ってから転記をすることもなくなります。

病院と複数診療所(クリニック含む)を有する法人では、病院から退院した患者様が診療所の訪問診療で継続して診察をしていく場合、法人内施設のシステム統一をし、訪問診療ではリモートデスクトップを使用することで、診療内容を継続的に病院の医師や看護師等も確認することができます。

また、訪問の医師は何かあれば病院の医師を始めとしたスタッフともいち早く情報共有できることから他の医師からも治療に関して意見交換も可能となり、診療の質を向上させることにも繋がります。

さらに患者様の病状が悪くなり病院で入院加療が必要となった際には在宅診療での診療経緯、使用薬剤等もいち早く確認し診療に繋げることも大きなメリットになると思います。

また訪問診療ですでに廻っている際のメリットとして、緊急往診の患者様が出た場合でも患者番号や患者名からカルテを見ることが可能になることから一度戻ってカルテを取る手間も省け、移動中に以前の訪問内容等の確認もでき、よりスピーディーな対応が可能となります。

4. 安全性

もうひとつのメリットとしては情報の安全性が考えられます。外部での患者情報の利用に関して危惧されることは患者情報漏えいが考えられます。

患者情報漏えいの多くは媒体の「紛失・盗難」が挙げられます。それらの問題点としては、その媒体に「患者情報が格納されている」ということがキーワードとなると思います。

仮想化のシステムであるリモートデスクトップでは「訪問使用するPCに患者情報は入れない」ということが大きく、それが情報漏えいのリスク低減となると考えます。

それらのことからもリモートデスクトップは訪問診療等の外部使用の際は安全性が担保されるシステムであると考えます。

5. まとめ

これから訪問診療を検討している、もしくはすでに訪問診療をしている医療機関でのシステム導入検討の際には、リモートデスクトップなどの仮想化システムの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

現在は多くのシステムベンダーでリモートデスクトップを活用したシステムの提供を行っています。それぞれの医療機関に合ったシステムを総合的に検討し導入することで、無駄のない電子カルテの導入につながると思います。

6. 最後に

筆者は各医療機関での無駄のない効率的なシステム導入に少しでもお力になれればと思っております。長くなりましたが最後までお読みいただきありがとうございました。

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