平成30年度(2018年)診療報酬改定!注目の一般病棟入院基本料の再編と統合について
平成30年度診療報酬改定(第1回)
2018年3月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

1. 間近に迫った平成30年度診療報酬改定!

平成30年度診療報酬改定まで秒読みとなりました。先日とある病院の事務長様とお話をさせていただきましたが診療報酬改定の話題で持切りといった感じです。それぞれの病院でも関係する報酬体系には注目されていることと思います。

今回はその中でも話題となっている「一般病棟入院基本料(7対1、10対1)の再編と統合」に決着がついたようなので、そこを中心にお話をさせていただきます。

2. 7対1一般病棟入院基本料へのテコ入れ

入院医療の検討としては下記の理由から、新たに「急性期一般入院基本料(仮称)」への再編・統合という話が検討課題として浮上いたしました。新たな入院医療の評価体系として、基本的な医療の評価部分と診療実績に応じた段階的な評価部分との二つの評価を組み合わせた評価体系に再編・統合する見込みです。

  1. 「将来の医療ニーズの変化に対応して効果的・効率的な入院医療提供体制構築の考え方」
    これから先の医療ニーズとして地域差を伴いながら大きく変化することが予想される。このような変動要素に応じてより適切な医療提供を進めるためには入院基本料の傾斜配置も加味した上で診療実績に応じた段階的な評価を組み合わせることが今後のニーズと資源投入のバランスをとる上で望ましい。(中央社会保険医療協議会(平成30年1月24日)検討資料より一部抜粋)
  2. 「7対1一般病棟の算定病床の現状と見直し」
    平成18年度(2006年)診療報酬改定で創出された7対1一般病棟入院基本料は、その後の急速な病床増加とともに急性期入院患者をより適切に評価する指標として、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合が要件として導入されてきました。
    7対1一般病棟の届出病床数は約38万床ピークに減少傾向にあり、重症度、医療・看護必要度の該当患者割合もばらつきが見られる。
    さらに7対1一般病棟と、10対1一般病棟との間に非常に大きな報酬差(約200点)がある中、7対1から10対1への転換は難しい。
    このため今回の診療報酬改定では、将来あるべき入院医療の評価体系を見据えながら、7対1一般病棟と、10対1一般病棟の中間的な評価となる入院料を設定し、医療ニーズの変化に対応していく報酬設定の検討を行った。(中央社会保険医療協議会(平成30年1月24日)検討資料より一部抜粋)

3. どのような報酬体系となるのか

現状の一般病棟入院基本料は表1のような体系を取っています。現在でも10対1に関しては看護必要度加算1~3が段階的にプラスされていて、すでに基本部分と実績部分といった体系が取られています。今回の改定では7対1一般病棟入院基本料にも実績部分を取り入れ入院料1~3の3段階の体系を作ることが検討されました。

また表1を見る限り現行の7対1入院基本料が入院料1となっているところが気になります。入院料1に該当から外れ入院料2もしくは入院料3となった場合は、入院料の減収は避けられないものになってしまうのではないかと考えられます。

[図] どのような報酬体系となるのか

(出典:2018年1月24日 中央社会保険医療協議会)

4. 判定基準の重症患者割合!

さて、この入院料2・3に該当する現行の7対1病棟がどのような基準で分けられるのか。ということに関心は高くなると思います。平成30年1月24日の時点では判定基準として3つの判定基準が検討されていました。

  1. 「現行の定義基準」及び「従来の判定方法」から見た重症患者割合
  2. 「見直し後の定義・基準」及び「従来の判定方法」から見た重症患者割合
  3. 「見直し後の定義・基準」及び「診療実績データを用いた判定方法」から見た重症患者割合

1月24日の検討会資料では(2)の判定基準を使い、重症患者割合30%以上で検討がされたようです。診療側委員は現状評価で割合25%とすべきとの意見もあり平行線となっておりましたが、1月26日の中央社会保険医療協議会総会において公益代表の裁定により一般病棟入院基本料の重傷者割合が以下の通り決定する見込みです。

  • 急性期一般入院料1(現行7対1):重症患者割合30%以上
  • 急性期一般入院料2(新設評価基準1):重症患者割合29%以上
  • 急性期一般入院料3(新設評価基準2):重症患者割合28%以上
  • 急性期一般入院料4(現行10対1必要度加算1):重症患者割合27%以上
  • 急性期一般入院料5及び6の基準値については現行の重傷患者割合18%と12%に相同する推計値を設定する
  • 適応に当たっては、必要な経過措置を設ける

上記の通り、今回の大きな争点であった現行7対1入院基本料の届出に関する重症患者割合は、30%以上については入院料1、30%に満たないものは新評価基準で、落着の見込みです。

5. 重症患者割合判定基準について

さて今回採用となった判定基準ですが上記(2)が採用されたようであります「表2」をもとに、この決定によりどのようなことが考えられるか検証してみたいと思います。

[図] 重症患者割合判定基準について

(出典:2018年1月26日 中央社会保険医療協議会)

表2赤枠の数字が今回、急性期一般入院料1・重症患者割合30%以上で使われた数字列となります。今回の判断基準「見直し後の定義及び従来の判定基準」は向かって右から2列目の30%が基準値となります。

そして一番左列は現行定義となります、現行が25%であったので今回は26.6%へ上がるので現行定義で考えると実質1.6%の上昇となります。

また、その右列のパーセンタイル値は26.6%となっていますので今回の改定により26.6%の病院で急性期一般入院料1が取れない状況となります。数としては約400病院が入院料2もしくは入院料3の急性期一般入院料となることが予想されます。

またEFファイルを使った実質データから見ると、重傷患者割合25.6%以上で急性期一般入院料1の報酬を得られる結果と同等になります。

重症患者割合が上がり、特に中小の病院では入院2もしくは3となる可能性が高く経営にも大きな影響をあたることが予想されます。

6. 急性期一般入院基本料(仮称)の報酬

2018年診療報酬改定では7対1、10対1の一般病棟入院基本料を入院料1~7の7段階に分けることになりました。(表1参照)

入院料4~7に関して、今回の診療報酬改定では変更はしない方針なので現状の報酬になると思われます。

では入院料2・3の報酬額が気になるところですがまだ明確な数字は出ていません。検討の中で「7対1と10対1には約200点の差がありその中間的な報酬体系を検討するとの見解がありますので、個人的な見解から考えこのように予想します。

  • 入院料1:1591点
  • 入院料2:1524点
  • 入院料3:1457点

再度書き加えますが、これはあくまでも個人的な見解ですので参考程度と考えていただきたい。

また、上記報酬額を基に入院料2もしくは入院料3になった場合、現状の一般病棟一般入院料と比べ減額割合がどれぐらいになるか検証してみました。

  • 入院料2:4.2%減
  • 入院料3:8.4%減

このような減額が考えられ、病院経営としては大きな影響が出ることが考えられます。

7. まとめ

今回は平成30年度診療報酬改定で大きな関心がある7対1一般入院基本料について書かせていただきました。病院によっては入院料の減収といった厳しい状況になる可能性があります。

また、国は今後も「適正な医療提供、質の高い効率的な医療提供」という方向性で医療提供体制をコントロールしていくと考えられます。

病院にとっては厳しい状況でありますが、必ず突破口は今回の診療報酬改定の中にあると筆者は考えます。

このコラムで何か少しでもお役に立てれば幸いです。最後までお読み頂きありがとうございました。

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