いよいよオンライン資格確認義務化。病院にとって必要か。(Part2) 2023年1月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

はじめに

2021年3月25日、いよいよオンライン資格確認が開始となる予定時期であったが、先行運用で問題が発生し本格稼働が遅れるとの報道が出たことを覚えているであろうか。

その後2021年10月20日に本格運用が開始された。最近多くの医療機関で目にすることが増えた「オンライン資格確認端末」。2023年4月にはオンライン資格確認義務化も決まり、未導入の施設は導入に向けての作業も進んでいると思われる。2022年11月6日時点でのオンライン資格確認参加状況としては、病院:48.9%、医科診療所:22.9%、歯科診療所:24.4%、薬局:57.3%となっている。一方で申請率はそれぞれ80%以上となっていることから、これから導入する医療機関が多いと思われる。

資料1:オンライン資格確認申し込み状況_出典:厚生労働省

資料1:オンライン資格確認申し込み状況_出典:厚生労働省
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今回筆者は以前にコラム執筆をした「いよいよ始まるオンライン資格確認は病院にとって必要か」(注1)で記載した内容の再検証と、これから導入する医療機関がどのようなところに気を付けて運用検討すべきかを書かせていただきたいと思う。

マイナンバーカードの普及率

以前のコラムにオンライン資格確認について病院関係者と話した内容を記した。「結局マイナンバーカードを持っていなければ意味がない!そもそもそんなに持っている人はいないでしょ。」とのこと。筆者も当時はその通りであると思った。そんな中で筆者はマイナンバーカードの普及率予測を立てコラム内で示した。

こちらのデータが興味深い結果となったので改めて示したい。

資料2:マイナンバーカード普及予測

資料2:マイナンバーカード普及予測
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資料3:マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和4年10月末時点)

マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和4年10月末時点)
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資料は2020年8月から2021年3月までの総務省データから増加率を算出したところ144%であった。仮にこのまま同様な増加率をたどると仮定したデータとして当時作成したものである。

当初運用開始とされた2021年3月の段階では26.3%の普及率だったが、2022年4月には43.3%、同年6月には45.3%に、オンライン資格確認の義務化が発表された同年8月は47.4%となり最新の発表の2022年10月は51.1%となった。(※コラム執筆時11月時点の情報)

筆者の予想グラフ信頼上限(普及率)と見比べると2022年4月42.14%、同6月44.53%、同8月46.91%、同10月49.29%と信頼上限と近い数字で推移した結果となった。

正直筆者はここまでの数字にたどり着くのだろうか? 相当国が本気を出さないと難しい数字ではないかと思っていたが、国のキャンペーンや広報活動、あとは国のデジタル化に向けた本気度がここまで引き上げたものと感じている。

運転免許証の保有率70%が一つの指標と言われる中、この数字もそう遠くない時期に達成する可能性も見えてきたと思う。一方でマイナンバーカードが普及してもマイナ保険証への紐づけが多数にならなければ医療機関での使用率は上がらないことを付け加えたい。

オンライン資格確認の位置づけ

オンライン資格確認は医療にとって業務改善をもたらすツールである、医療業界のDX改革への先駆けと筆者は医療中心の考えとして思っていた。もちろん、医療に携わる人間として考え方は間違っていないと思っていたが、先日テレビ出演した河野デジタル担当大臣の言葉で、オンライン資格確認はもっと大きな概念の中の一部に過ぎないと感じた。その言葉は「マイナンバーカードはデジタル時代の入場券である」という言葉だ。この言葉を聞いたことで、義務化やオンライン資格確認に対する加算の引き下げに対して頭の中がすっきりとした。

要するにオンライン資格確認はマイナンバーカード申請をした国民へのサービスの一つという位置づけになると筆者は思う。

皆さまはどのように思い、感じ取っているだろうか。

オンライン資格確認の上手な考え方

昨今、病院経営が厳しい中、導入費用の補助だけでシステム維持費用が掛かるオンライン資格確認、費用負担が多く「とんでもない!」と思う方も一定数いらっしゃるのではないかと思う。

ただ義務化された現在ではオンライン資格確認は導入しなくてはいけないものになった。そうなれば考え方を早い段階で前向きな方向へシフトすることが重要となる。オンライン資格確認導入でいかに恩恵を受けるか、それは自院での情報利用運用と人員配置となることは間違いないと筆者は考える。

オンライン資格確認のメリットとしてはご周知のこととは思うが、改めて以下に記載したい。

  1. 【返戻削減】資格過誤によるレセプト返戻の作業削減
  2. 【受付業務】保険証の入力・確認の手間の削減
  3. 【事前確認】来院・来院前に事前確認できる一括照会
  4. 【併用確認】限度額適用認定証等の連携
  5. 【情報閲覧】薬剤情報・特定健診情報の閲覧
  6. 【災害時】災害時における薬剤情報・特定健診情報の閲覧

これらのメリットの中で実際にオンライン資格確認を既に実施している病院から伺ったメリットや課題点などを書かせていただきたい。これからオンライン資格確認を導入する医療機関で是非参考にしていただければと思う。

筆者が関わっている病院でよく耳にするのは「来院・来院前に事前確認できる一括照会」は業務改善、患者サービス向上としては良いとのことだ。

予約診療をしている病院では前日のうちに翌日来院予定の患者様保険情報の確認をすることで、当日業務の負担軽減になっている。また患者にとっては確認作業がなくなるので、スムーズな受付となるメリットが大きいと話している。受付待ちの改善には期待が持てると思われる。

また4の「限度額適用認定証等の連携」についても、今までは患者様が申請をおこなって医療機関へ提出という流れだったが、オンライン資格確認で患者申請がなくても確認ができ、患者からの申請書提出が不要になり、なおかつ支払時には既に適用される。これは患者にとっても、病院にとってもかなりのメリットではないかと思う。この2点については既に多くの医療機関でメリットとして感じている状況である。

一方で課題としてはどのようなことがあるか。

多いのは5の「薬剤情報・特定健診情報の閲覧」であり、「(1)医師への情報不足、(2)参照方法の検討」が大きいと思われる。医師への情報不足としては、どうやって見るのか分からない、どんな情報がどのように見られるのか分からないといった内容だ。

情報がどのように見られるのかといったことは「医療機関向けポータルサイト」でサンプルなどの情報を見ることができる、これらの情報を活用し医師等への理解と使用方法などの検討、啓蒙活動に使用されることをお勧めしたい。

また、参照方法については、医療機関のシステム導入状況によって変わってくる。自院の状況などを考慮して参照方法を検討されることをお勧めする。

参照方法は以下の3つ。

  1. 電子カルテ、調剤システムより参照
  2. 専用の閲覧用端末より参照
  3. 資格確認端末より参照

電子カルテ導入済みの施設であれば「1.電子カルテ、調剤システムより参照」といったところが運用面、参照の手間を考えたときに現実的な運用と考える。

こちらの場合は既存の電子カルテメーカー(電子カルテ導入を検討している場合は仕様への記載、確認)へ「参照・連携方法」を問い合わせして参照運用を確認することをお勧めする。

「2.専用の閲覧用端末より参照」とは情報参照用端末を別に設置して閲覧専用端末として使用する。使用想定としては、電子カルテが入っていないが参照はペーパーレスにしたい場合や電子カルテ端末からの参照とは別端末にしたい、参照は特定の場所の特定の端末のみからにしたい、といった場合が考えられる。

「3.資格確認端末より参照」は資格端末から情報をプリントできる機能を使用する運用となる。この場合は情報をプリントし診察室などへ運ぶ運用が想定され、紙カルテを使用している施設の運用が考えられる。

電子カルテの普及率から考えると1の電子カルテ、調剤システムからの参照が多いのではないかと思われる。

また、3の資格確認端末の参照運用としてもう一つ考えられるのは、電子カルテが止まって診療を続けなくてはいけない障害時の過去処方内容参照対応となることも考えられる。

参照方法を2系統で検討しておけば、障害時に必要な対応も即座に対応可能となる。

ただ、資格確認端末も使用できない大規模障害時は使用できない可能性があることも付け加えたい。

これからオンライン資格確認を使用する医療機関は、このような視点から運用等の検討をしてみてはいかがだろうか。運用開始にあたっては「スモールスタート!」できるところから運用開始してみるのが大切になる。

まとめ

オンライン資格確認はデジタル時代の1つとして、今後進化していくことは間違いない状況となった。この制度を逆手に利用して、業務改善や人員の配置、現在話題となっている障害時対応の再整備など、オンライン資格確認を運用するにあたり多くの想定や計画を見直す契機と考えてみてはいかがだろうか。

最後となるが、「医療DX・働き方改革・障害時対応」これらを見直す大きなきっかけになるオンライン資格確認制度。各医療機関での運用改善にコラムの内容が良いヒントになることを期待してコラムを締めくくらせていただきたいと思う。

筆者の考えが皆さまのお役にたてることを願っています。最後までお読みいただきありがとうございました。

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