電子カルテシステム有効活用に向けて
~指導管理算定フォローシステムの現状と活用効果について~
2021年9月

執筆者:株式会社 Benett One(ベネットワン)
    代表取締役・診療放射線技師
    米山 正行(よねやま まさゆき)氏

はじめに

新型コロナウイルス感染症の影響で病院の医業収益が減少しているが、今回は医学管理料の算定改善に効果があると考えられる「指導管理算定フォローシステム(以下、算定フォローシステム)」についてお話をさせていただく。

本システムについては2020年4月(注1)コラムへ掲載させていただいたことがある。実はこのシステムもテンプレート技術を活用しているが、最近機能が追加されたとのことである。

今回は特に機能追加された部分、算定フォローシステムの可能性についてお話をしたいと思う。

算定漏れの多い医学管理料

医学管理料とは、医療的な処置や投薬などの医療技術の提供とは別に、医師による患者指導や医学的管理を行った際に算定される診療報酬項目である。

医学管理料は日頃から医師等が患者に行っている行為に対し評価をする算定項目であり、通常行っている指導などの業務が診療報酬に反映されている。

例えば特定疾患療養管理料は、200床以下の病院で生活習慣病の患者に対して、医師が治療計画に基づき指導した場合に評価する内容である。しかし算定可能な主病名と回数(月2回以内)等の条件に加え、指導の記載では服薬、運動、栄養等の療養上の管理が必要なため、算定漏れや算定ミスとなっているケースがある。

算定漏れ・算定ミスの原因

医学管理料の算定要件に関して、医事課担当者であれば熟知していると思うが、実情は医師がそこまで熟知しているとは言い難いのではないかと思う。

算定要件には、初診より1カ月後から算定可能となる。しかし初診から1カ月過ぎたところで特定病名が付いた時にはすぐに算定できるという内容で、さらに月の算定回数や他の医学管理料と重複している際には算定不可などの要件ルールもある。

また算定取得の根拠となる検査、薬剤、病名などのデータに加え、実際に管理を行った際の適正な記事記載なども算定取得の際にはチェックされる。

それに加え、医事課担当者による算定、いわゆる自動算定は御法度ということでもある。

これらの算定基準を医師が熟知し、算定項目に気づき、適正な医学管理をし、その内容を記載しなくてはならない現状がある。

このような状況から医学管理料は算定漏れやミスが多い算定項目と言われている。

算定フォローシステム

以前コラムへ掲載したその最中、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、2020年度は病院経営に大きな打撃を与えたのは皆さんも周知のことだと思う。

多くの病院で2021年度の経営立て直しに向けて動き出している状況と思われる。筆者はその中で算定フォローシステムの活用は収益増収と医師の業務価値向上に大きな役割をするシステムではないかと思っている。

その算定フォローシステムで今回の機能強化の中から、いくつかのすぐにでも使いたくなる内容を確認したいと思う。

1) 検査連携関連強化

検査結果との連携強化により、悪性腫瘍特異物質治療管理料などの算定取得に向けて記録の適正化などが向上。

また検査結果に基づき記事記載が必要であるが、この検査結果を引用入力できる機能も追加された。これは医師にとっては検査結果の記載業務軽減にもなる。

2) 算定チェック機能強化

薬剤群の特定機能

特定薬剤治療管理料1の算定根拠となる薬剤をレセプトにコメントとして記載する必要があるが、医師のカルテ記載時に、薬剤情報をもとに薬剤群を特定し、記事記載のテンプレート起動が可能となり、レセプトへの薬剤に基づくコメント記載が可能になる。

3) テンプレート連携機能強化

根拠表示機能

算定可能な入力テンプレートの表示時に算定根拠となる情報をテンプレート上部に表示。これにより医師が何故このテンプレートが立ち上がったのか根拠を見ることができる。

4) その他

ログ出力機能

算定可能なテンプレートが起動後にどうなったか「登録もしくは閉じられた」などの状況をログとして残す機能。これにより、「どの患者に誰が(医師)登録(算定)をした」もしくは「誰が登録をしなかった」などの状況が把握できる。

これらの機能強化により、これまで以上に算定可能な医学管理料の項目が増えただけでなく、多くの医学管理料算定取り漏れ、算定ミス解消に向けて一歩進んだと考える。

算定フォローシステムの可能性

医学管理料の適切な算定として算定フォローシステムには着目していた。

機能強化内容で筆者が特に興味を持った機能として「ログ出力機能強化」がある、これは算定可能なテンプレートが起動後に医師が記事を登録したか、登録せずに閉じたかなどの操作履歴がわかる機能だという。

経営サイドとしては、なかなか確認も難しかった部分が「見られる」というこの機能。これにより、どの医師がどのような算定項目に対してどのようなアクションを取ったかというところを見ることができる。

院内でどのような算定取得が可能と判断され算定フォローシステムが動いたか。なぜ算定を取らなかった(取れなかった)などの「調査・検証」をすることも可能になると考える。

また、算定フォローシステムは導入前にシミュレーションすることができる。

2020年7月に田中幸三氏が掲載したコラム(注2)によると「諸条件を踏まえて行った結果、対外来総請求額における改善可能率は、最小値0.4%、最大値4.5%、平均1.8%となった。この改善可能率を金額ベースに換算すると、最小値で年間200万円、最大値で年間1億400万円、平均で2,260万円となり、月額ベースに換算すると平均で約188万円程度の改善が可能となる。」

現在の経営状況を考慮すると、これだけの改善可能性が考えられるのであれば、まずは自院で医学管理料の算定漏れなどがどれぐらいあるかを知る上で、シミュレーション実施は検討してみるべきではないかと考える。

病院の医業収益向上に向けて、算定フォローシステムは大きな可能性を持ったシステムと考える。

まとめ

算定フォローシステムは医学管理料の「取り漏れ・算定ミス」を防ぎ、医師の正しい業務に対する成果を確実に収益にするシステムと考える。

また働き方改革として多くの病院で業務改善が挙げられている。筆者は業務改善には「時間短縮・生産性向上」という2つのポイントがあると考えている。算定フォローシステムは医師の業務価値向上でもあり、生産性向上といった側面もあることから、医師の働き方改革へも繋がるシステムと考える。

今回は全6回として新型コロナウイルス感染症拡大による経営悪化に対しての取り組みから医療DXの活用、そして電子カルテシステムの活用についてお話をさせていただいた。

新型コロナウイルス感染症収束の兆しがまだ見えず、各医療機関も大変な状況が続くと考えられる中、このようなシステムの活用も検討する時にきているのではないかと思う。

筆者のコラムが少しでも皆様のお役に立つことができれば幸いである。

長くなりましたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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