イタリア旅行で訪問した2つの図書館
図書館つれづれ [第55回]
2018年12月

執筆者:ライブラリーコーディネーター
    高野 一枝(たかの かずえ)氏

はじめに

学生時代の先輩方とイタリアを旅してきました。同行したお二人は図書館関係者ではありませんが、付き合っていただき2つの図書館を見学しました。言葉がわからないので紹介だけになりますが、ご参考になればと思います。

ラウレンツィアーナ図書館

フィレンツェにあるサン・ロレンツォ教会付属の図書館です。図書館は教会の敷地内にありますが、入口は教会とは別になります。設計はミケランジェロ。壁面や円柱にミケランジェロらしいこだわりがあるのだそうです。玄関の水の泡を表現したという曲線を描いた階段は重厚で感動ものでした。中は、左右に木製の椅子がずらりと並んでいましたが、真ん中を歩くのは禁止でした。あとでわかったことですが、真ん中の床はメディチ家ゆかりの赤と白のモザイク模様のため、だから禁止だったようです。図書館は、通路中ほどから右手に入ったところにありました。大きさはそれほどでもありませんが、幾つかの椅子付きの棚があり、頑丈な網戸を貼った中にぎっしりと書物が収まっていました。イタリアで一番多くのエジプトのパピルスを所有しているのだそうです。ルネッサンス期はまだ活版印刷技術が発明されていなかったから、人の手で書き写された写本は貴重な存在だったのです。ラウレンツィアーナ図書館に入るのは、サン・ロレンツォ教会単独のチケットでは入れないので、教会・図書館の共通券を購入します。フィレンツェを訪れることがあれば、是非訪ねてみてください。

なお、フィレンツェにある国立図書館にも行ってみましたが、調べ物をする人以外はお断りと、観光客は入ることはできませんでした。

マントヴァ市の図書館(注1)

先輩の友達がマントヴァに住んでいて訪れることができました。マントヴァには、フィレンツェから北へ特急列車でレッジョエミリア駅まで1時間、その後バスに2時間ほど乗って行きます。でも、実際のバスは30分も早く着きました。道路状況によって到着時間が違うのだと思います。マントヴァは三方を湖に囲まれ、オペラのリゴレットの舞台にもなった風光明媚な町です(といいながら、私は知りませんでした)。また、14才のモーツァルトがこけら落とし公演をしたビビエーナ劇場があり、今も演奏会で使われています。石の文化は、何百年経った今でも普通に使われていて、素晴らしいと感じました。

図書館はドゥカーレ宮殿などの観光スポットから少し離れたところにあり、児童コーナー、一般書コーナー、新聞・雑誌コーナー、映像コーナーに分かれていました。1900年ごろの写真資料なども全てデジタル化されたため、映像コーナーは、現在クローズされています。

蔵書数は20万冊ほど、DVDを7,000、ビデオを1,500所有しています。本の貸出は、一人10冊、1か月までで、15日間の延長が可能です。但し、ビデオの貸出は7日間。開架のビデオの中身は空で、中身は貸出時にカウンターで渡されます。日本のジブリは大人気だそうで、カウンター前にポスターも貼られていて、品揃えも豊富でした。

児童コーナーで目を引いたのは、子どもたちへクレヨンなどの筆記用具や用紙が用意されていたことです。小さな子どもたちが机に向かって思い思いに何か書いていました。そういえば、日本の図書館では、あまり見かけない光景です。本にいたずらをされるからでしょうか?子どもたちに読み聞かせでもするのか、敷物が敷かれている場所がありました。日本なら靴を脱ぐところですが、もちろんそんなことはなく、みんな土足で歩いていました。気になって帰国後メールで確認したところ、やはり読み聞かせはその場所で行うそうで、椅子を持ってきたり、地べたに座ってやります(ちなみにお友達の家は、玄関先で靴を脱いでいました。日本の文化は凄い!)。カウンターには、図書館で開催される子供向けオペライベントのパンフレットが置かれていました。

話はそれますが、ミラノのスカラ座を見学した際に、子どもたち向けのワークショップを目にしました。8畳ほどの大きな布地の端をみんなでもって、音楽に合わせて布で波を作っていきます。音の強弱や調べによって波の大きさもうねりも変ります。隣では、オペラの子役でしょうか、紙に思い思いの絵を描いて、それを切り抜いて体に巻き付けて、音楽に合わせて演じていました。スカラ座という伝統ある場所で、子どもたちの感性は育まれ、伝統をつないでいくのだと思いました。

マントヴァの図書館で開催されるオペライベントにも、伝統を育む共通するものを感じました。

一般書コーナーには、高い所の本をとるためのハシゴとハンガー掛けが目につきました。棚は、確かに日本より高いです。ハンガー掛けが置いてあるのは、1日の寒暖の差が大きいからかもしれません。日本でも冬には欲しいと思うことがあります。本棚に囲まれて、机と椅子があちこちにあり、皆さん熱心に机に向かっていました。インターネット端末も、申請が必要ですが利用できます。自動貸出機は返却もできるようで、返却した本は貸出機の脇の大きなボックスに自分で入れるようになっていました。

司書の方に、お友達を通して少しだけお話を聞くことができました。以前は延滞本があると、警察が家まで押しかけて督促をしていたそうです。現在は、延滞本がある場合は一定期間貸出さないように規則が変ったそうですが、規則がゆるくなった分、不明本も多くなったとのことでした。開館日は、月水金は9:00~20:00、火木は9:00~22:30、土曜日は9:00~18:00と曜日によって違います。日本の‘県’に相当する‘基礎自治体’内では、相互貸借の機能もあります。日本の本もありますが、ロシア語の本が多いのは、以前の市長がロシア出身者で亡くなられたときに寄贈されたのだそうです。ミラノなどの都市ほどではありませんが、町で声をかけた方もブラジル人で、少なからず移民もいるようです。但しマントヴァ県内に住む日本人は20人ほどで少ないです。お友達は、そのうちの半分は知り合いだといっていました。

余談ですが、お友達のパートナーはイタリア人ですが、日本の真向法を学び、マントヴァで教えています。自宅にお邪魔したとき、自彊術を披露したら興味を示したので、DVDを送り、ちょっとだけ日本文化の紹介にも貢献しました。

マントヴァ市は旧安土町(現在は近江八幡市)と姉妹都市だそうで、数年前に日本の写真を展示するイベントもしたそうです。司書の方が私にそれを見せたくて、一生懸命探してくれました。どの国の司書も真面目で熱心です。後日お友達が図書館のURLを送ってくれました。気になる方は、覗いてみてください。

司書の方が説明してくださった、古い写真が保存されているのは「Cataloghi」>「 Archivi fotografici lombardi」の検索画面で「 Titolo / soggetto (タイトル/件名)」のところに“Mantova”などを入力して検索するとでてくるようです。イタリア語がわかる人は、URLを翻訳して、私の間違いをご指摘ください。

図書館つれづれ

執筆者:ライブラリーコーディネーター
高野 一枝(たかの かずえ)氏

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