船橋駅前FACEビル2階の自由通路にあるNPO法人情報ステーションが運営している「ふなばし駅前図書館」にブックポストを併設し、10月15日より船橋市図書館の本が返却できるようになりました。また、西葛西に続いて、世界の童話図書館の2号館が9月26日に船橋駅前にオープンしました。
公共図書館と民間図書館が入り混じり、今ホットな船橋の様子をお伝えします。
まずは、今年のLibrary of the Yearの最終選考に残った情報ステーションのお話から。
情報ステーション(注1)は、当時20歳にもなっていなかった岡直樹氏が立ち上げた民間図書館です。授業が終わり、大学から地元に戻ってきても公共図書館は既に閉館していて図書館を利用することができません。「ならば、自分で作ってしまえ」と、2004年3月に高校の同級生と情報ステーションを設立しました。
そして、2006年5月に民間図書館1号館が開館しました。私もその時のことを辛うじて覚えています。「公共図書館が近くにあるのに、何故なんだろう?」といぶかっていました。あとで知るのですが、彼が取り組んでいたのは【まちづくり】でした。図書館はあくまでもツールで、気軽に本に触れる機会を提供すると共に、民間図書館を中心とする地域のコミュニティを構築することによって、地域活性化に繋げることを目的としています。
ホームページを見てもらうと、様々な活動を見ることができます。通算32カ所目となるカフェ&バーの中にある「BellB船橋南口図書館」は、10月8日にオープンしたばかりです。情報ステーションには現在600人のボランティアが登録されています。習志野の図書館では、未就学児が小学生に交じって、貸出のお手伝いをする光景もあるそうです。
船橋市図書館(注2)は、北館、東館、西館、中央館の4つの独立した公共図書館と、8つの公民館図書室がネットワークでつながっていました。船橋市では「暮らしの中にある図書館、身近に感じられる図書館を目指して」をスローガンに、10月15日より3つの公民館図書室を新設し、2つの公民館で図書の貸出返却窓口が設置されました。その一環で、船橋FACEビルにある情報ステーションも返却拠点として加わることになったのです。
でも、「何故民間図書館が返却窓口に?」と、皆さんも疑問を持たれたことでしょう。
船橋市図書館は、かねてより駅前に返却窓口を持ちたいと模索していました。FACEビルの5階には市の施設があるのですが、通勤通学の利便性を考えると、どうしても2階の通路を確保したかったのです。そこで、ビルの管理組合や情報ステーションと協議の上、情報ステーションに返却窓口の民間業務委託を依頼することになったそうです。
情報ステーションには、30代までの登録者が400人ほどいます。中には仕事復帰準備組もいます。そんな方々に少しでも働く喜びを取り戻してもらうには、今回の業務委託は、とても良い機会になるのではと個人的に思いました。
そして、最後は、世界の童話図書館@船橋駅前(注3)です。こちらは一般社団法人「世界童話普及会」からナカバヤシ株式会社が図書館運営を委託されている図書館です。西葛西館(蔵書約1500冊)に続いて2号館目になります。蔵書は約1600冊。どちらの図書館も貸出はしていません。
図書館の雰囲気は西葛西館がピンクをベースにしているのに対し、船橋駅前館は緑を基調にした爽やかなイメージです。訪れる方や船橋の土地柄を学びながら、地域にあわせた運営を心がけたいとのことでした。余談ですが、船橋館では本にカメレオンコードを貼っていました。
情報ステーションはボランティア運営ですが、世界の童話図書館は民間企業の委託運営です。後から参入する世界の童話図書館は、社団法人から設置場所が船橋と聞いたとき、既に船橋で活動されている情報ステーションを真っ先に思い浮かべ、快く受け入れてもらえるのか気になったそうです。
情報ステーションの岡氏は、その危惧に対し、「船橋に図書館が増えることは嬉しいこと」とかえって喜んでくださったとか。元々は“まちづくり”が目的だから、新しく図書館ができれば、それだけ本に触れ合う方が増えるということです。だから、ちっとも問題ではなかったのです。むしろ、これからは、各々の図書館の特徴を生かしながら公共図書館も含めたコラボレーションに挑んでいきたいと話してくれました。
船橋市は人口60万の街です。どこかで誰かと繋がり、見知らぬ人をつなげる場所、それが「図書館」であってほしいと皆さんおっしゃっていました。
ネットワーク化された公民館図書室や貸出返却窓口も増えた公共図書館と、情報ステーションと世界の童話図書館というそれぞれの図書館が、これから先どんな連携をしていくのか見逃せません。
10年ほど前の暮れも12月28日の話です。私は前日の27日から大阪へ出張していました。28日の午前1時、携帯が鳴り、寝入りばなに起こされました。営業のHさんからでした。とても興奮した声で、「S中央図書館の給水塔が破裂して館内が水浸し。サーバーは大丈夫だが朝一番にSEを出してほしい」とのことでした。大阪からは何もできず、とりあえずSEに連絡して朝向かってもらうことにしました。
そしてその日、出張から戻り、閉館間際の図書館に伺い、大変な1日であったことを知るのでした。
前日、図書館から営業へ非常事態の電話があったのは夜の9時を回っていました。急きょ図書館へ駆けつけると、33トンもの水が数時間で一挙に溢れ出していたのです。漏電の危険性があるためハード保守部隊へ連絡すると、夜10時過ぎにほろ酔いのIさんがつかまりました。K館長に酒気を帯びていることをお断りして、図書館へ向かってもらいました。
マシンルームが少し床上げだったことも幸いし、Iさんの処置で、マシンは漏電もなく何とか救うことができました。とはいえ、フロアーは金魚も泳げるほど水浸し状態です。翌日(数時間後)は当然休館の指示が出ると思いきや、K館長のリーダーシップがそこから発揮されました。連絡がつき集合した職員を幾つかのグループに分け、明確な指示と作業報告が時間ごとに的確におこなわれていきました。もちろん関係各位への連絡や近所の方々への配慮も忘れていませんでした。
館長の「最後まであきらめない」強い意志が全員の団結力を生み、早朝に合流したSEの作業も相乗効果を起こし事態を好転させ、なんと、10時ピッタリに開館という奇跡を生んだのです。
何より本の被害が少なくて済んだのは救いでした。夜を徹した不眠不休の復旧活動後、そのまま開館し無事1日を終えました。職員の方々は流石に疲れていましたが、皆さんの顔は爽やかな笑顔で満ちていたのを今も忘れません。
担当営業は、「上に立つものはかくあるべき」というリーダーシップを学ばせていただいた上に、K館長から直筆の感謝状をいただいたのです。今も大切にしている宝物です。システム提供業者は、“図書館のパートナー”を肌で感じた、彼にとって忘れられない想い出です。