新宿区立こども図書館でボードゲーム初体験
図書館つれづれ [第138回]
2025年11月

執筆者:ライブラリーコーディネーター
    高野 一枝(たかの かずえ)氏

はじめに

ゲームといえば、ポケモンとマリオぐらいしか思いつかず、もちろんやったことはありません。ゲームとボードゲームの違いすらわからない私。AIによると、広義と狭義の違いで、一般的に「ゲーム」はコンピュータゲームやスマホゲームなどを含めた遊び全般を指し、「ボードゲーム」は、電源を使わずにカードやサイコロ、コマなどを使ってテーブルの上でプレイするアナログゲームを指すのだそうな。

図書館でボードゲームのイベントを開催する話はちらほら聞いていました。実は、「どうして図書館でゲームを開催するのか?」ちょっと引っかかっていたのです。

そんな折、2025年8月、新宿区立こども図書館(東京都)で中高生向けイベント「ボードゲームの世界にようこそ!! Returns!」を開催すると聞き、伺ってきました。今回はボードゲームの体験談です。

いきさつとボードゲームの歴史

新宿区立こども図書館の担当の一人は、高校から大学時代はゲームサークルに所属していたそうで、まさか仕事に活かせるとは本人も思っていなかったそうです。世の中何が役に立つかわかりませんね。こども図書館で2024年2月に開催したボードゲームイベントの手応えを受け、今回は、横浜中華街でボードゲーム屋さんを営む伸居智和氏をお呼びしての開催となりました。

伸居氏によれば、ボードゲームはドイツが盛んなのだそうです。商品箱には商品名のほかに、誰が作ったゲームなのか必ず作者名が入ります。2025年7月にボードゲームの世界最高峰の賞とされる「ドイツ年間ゲーム大賞」に、日本のゲームデザイナーである林尚志さんがデザインした「ボムバスターズ」が選ばれました。日本人が制作したゲームがこの賞を受賞するのは初めてで、伸居氏も興奮気味に話してくれました。学童クラブや学校に呼ばれて紹介することはあるそうですが、図書館で開催するのは初めてとのことでした。図書館との事前打ち合わせで、当日はその日のメンバーに合わせたゲームを幾つか用意してくれていました。

まずは体験

参加者は4、5人の2グループに分かれて、さっそくゲームを開始。イベントの意図や要望によってゲームを幾つも紹介するケースもあるようですが、今回は2つに絞っての体験でした。

1.ワードスナイパー

作者は日本人。カードは表がお題、裏が文字となっていて、カードをめくり「お題」と「文字」の組み合わせに、一番早く答えた人がカードをもらえます。おてつきOK! 正解したら次のカードをめくります。しばらく考えても答えが出ない時は、前の文字カードを残したまま次のカードをめくります。山札の最後の一枚がめくられたらゲーム終了。カードの右上に書かれている点数の合計が多い人の勝ちです。

大人版はカードにより点数が変わりますが、子ども版はすべて1点。

例えば、「て」で始まる大きいものは何? という感じで答えていきます。私たちのグループには現役の高校生がいて、やはり柔軟な頭で直ぐに言葉が出てきます。ほんとに言葉が出てこない! 子ども版は「ひらがな」で書かれているので、より創造性も豊かになりいろいろな言葉が出てくるのだそうな。ひらがなの広がりは大人にはかえって邪魔。大きいって何と比べ? とか、変な思考が走るのです。自分のなかにあるものを言語化するゲームで、世代間によって出てくる言葉も違います。例えば、「えもんかけ」を知らない世代には「ハンガー」のことだよと、世代間コミュニケーションにも一役買ったりするそうです。

2.ドミノゲーム

ドミノといえばドミノ倒ししか知らなかったのですが、ほかにもいろいろな遊び方があるのです。ゲームのルールはいたって簡単。パイには2つの数字があって、基本は同じ数字がつながるように手持ちのパイを捨てていきます。出せるパイがない時はパイを補充。ぞろ目のパイが出されたら呪いがかかり、ルールが変更になり複数の枝が発生します。すぐに飽きるかと思いきや、繰り返しの学習効果で、回数が深まればそれなりに先読みしたりする楽しみもありました。ゲームが終わるごとにジャラジャラとパイをかきまぜる間の会話も弾み一体感が出てきます。当たり前だけど、各回ででき上がるパイの形も違います。

取材だけのつもりが、すっかり一緒に遊んでいました。

実際にゲームをやってみて

開催の図書館担当者に感想を聞いてみました。「図書館の利用が少ない中学生・高校生世代が来館するきっかけを作ろうという意図で企画したものの、募集対象は中学生・高校生に絞らず一般の方(大人)もご参加いただける形で募集しました。結果的に世代間交流の場になり思わぬ収穫だったと感じています。やはりボードゲームはコミュニケーションが大事です。ゲームのルールが平等に定められた環境では、中学生・高校生の利用促進だけでなく、世代間交流に効果があることが今回実証されました。図書館がコミュニティー機能を持つ旗手として、ボードゲームはありだと思っています。今後も内容や開催時期等を模索しながら実施していきたい」とのことでした。

私は抽象的な美辞麗句はなかなか頭に入ってこないのですが、ゲームを通じて自分の言葉で言語化できる経験にもなりました。回を重ねるごとに会話も弾み。ボードゲームはコミュニケーションツールであることを感じました。とはいえ、いつも楽しくできるわけではないようです。場がしらけている時こそファシリテーターの本領が発揮されます。私たちも最初は伸居氏にかなり助けていただき流れを作ってもらいました。

遊びながら啓発という意味では、恩納村の「さんごカルタ」もしかり。友人からは、「水木しげるの妖怪かるた」や伊賀上野のお土産物屋さんで買った「芭蕉かるた」など、いろいろなものが挙がってきました。皆さんはボードゲームを図書館でやる意味をどう感じたでしょうか?

図書館つれづれ

執筆者:ライブラリーコーディネーター
高野 一枝(たかの かずえ)氏

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